園子温ら輩出…PFFスカラシップ期待の新星・廣原監督、恩師・黒沢清と師弟対談!
現在、オーディトリウム渋谷で公開中の映画『HOMESICK』の廣原暁監督が23日、東京藝術大学大学院時代の恩師・黒沢清監督を招いてトークイベントを行なった。本作は黒沢監督の『ニンゲン合格』に触発されて生まれた作品であり、廣原は少し落ち着かない表情で「ご本人が隣にいてすごく緊張する」と恐縮しながらも、作品への思いを冗舌に語った。
本作は、卒業制作『世界グッドモーニング!!』が『母なる証明』のポン・ジュノ監督をはじめ、国内外で高く評価された期待の新鋭・廣原監督が手掛けた人間ドラマ。園子温、橋口亮輔、荻上直子、石井裕也ら今をときめく監督を輩出した製作援助システムPFFスカラシップによって製作。再開発で取り壊される実家にとどまる30歳の青年が、近所の悪ガキ3人組との交流を経て、自らの居場所を見つけ成長していくさまを描く。
大学院時代から黒沢の作品に憧れていたという廣原は、「とにかく『ニンゲン合格』という作品にすごく感動して、こういう作品をパクッてでもいいから作りたかった」と告白。その熱い思いが届き、「しばらく企画を寝かせていたのですが、スカラシップに応募できることになり、僕なりに『ニンゲン合格』を咀嚼(そしゃく)して作品を作り上げた」と振り返った。
これに対して黒沢は、「『ニンゲン合格』が好きだというのは初めて聞いたが、あの作品とはまったく質の違う廣原のオリジナリティーあふれるユニークな映画に仕上がった」と作品を評価。さらに「何かに取り残されるという設定は廣原のテーマなのかな? 主人公と遠くのものとの関係が強烈につながってくる演出がとても目についた。飛行機雲や空を舞う風船、花火、留守番電話など、距離のあるものと自分の描き方というか。距離といえば、主人公に絡む近所の子どもたちとの関係性も良かった。距離の取り方が絶妙にうまい監督だな」と絶賛の言葉が続いた。
黒沢からの褒め言葉に照れまくる廣原だったが、最後に黒沢が「ところでこの作品、絶対にコメディーにはしないぞ! っていう意志で撮ったの?」と問うと、廣原は「いえ、僕なりにコメディーにしたつもりだったんですが……」と苦笑いする場面もあった。なお、オーディトリウム渋谷では24日に映画評論家の渡邊大輔、25日に音楽を手掛けたトクマルシューゴを招いて廣原監督とのトークショーが行なわれる。(取材・文:坂田正樹)
映画『HOMESICK』は8月30日までオーディトリウム渋谷にて公開中(全国順次公開)