深作欣二の息子・健太監督、父の言葉に助けられた…幸福な映画人生に笑顔
竹中直人、北乃きいが出演する映画『ケンとメリー 雨上がりの夜空に』が24日、大分県由布市の湯布院公民館で開催された第38回湯布院映画祭で初上映され、深作健太監督、プロデューサーの厨子健介、編集の洲崎千恵子らが観客とのQ&Aを行った。
本作は、異国の地で日本語教師を務める娘(北乃)の結婚を阻止するために、マレーシアにやってきた商社マンの健(竹中)が、ひょんなことから片言の日本語を話す中国人メリーのトラックに乗り込み、珍道中を繰り広げるロードムービー。オールマレーシアロケ、日本人俳優は竹中、北乃のみという無国籍活劇だ。
「母(女優の中原早苗さん)は昨年の5月に亡くなったのですけど、(その前の)3月に映画が完成して、試写に来てもらえた。間に合ってよかった」としみじみと語った深作監督。「ただ、最近の俳優さんは知らない人ばかりね、というんです。そりゃ知らないだろうなと思いましたよ」とユーモラスなコメントを付け加え、会場を笑いに包んだ。
上映時間87分、軽妙なギャグで畳み掛けるストーリーが展開する本作は、菅原文太・愛川欽也コンビで人気を集めた映画『トラック野郎』シリーズをほうふつとさせる。観客からも「娯楽を追求した作風が楽しかった」「往年のプログラムピクチャーの楽しさがある」といった声が多数。その言葉に深作監督も「僕は大泉の東映撮影所で助監督をやっていた最後の世代」と自負する。
父は『仁義なき戦い』の深作欣二監督。この日も観客からもしばしば父の名前が飛び出したが、「オヤジが死んでから10年くらいたちますが、いまだにあちこちでオヤジがこう言っていたよといった話を聞くんです。ついこの間も、親父が読んでいた本の間からメモが出てきて。『黒蜥蜴』をやっていたころだと思うけど、そこには『今は種をまくとき。これからだ』と。自分もまだまだだしくじけそうになるときがあるけど、父だって悩んでいた時期もあるんだなと励まされた。親の七光りと呼ばれているけど、自分が悩んでいるときにはオヤジの言葉が助けてくれる。幸福な映画人生ですよ」と笑顔で語った。(取材・文:壬生智裕)
映画『ケンとメリー 雨上がりの夜空に』は11月9日 全国公開予定