誤って女性を射殺してしまった密猟者を描いたサム・ロックウェル主演の映画とは?
映画『月に囚われた男』のサム・ロックウェル主演の新作『ア・シングル・ショット(原題) / A Single Shot』について、デヴィッド・ローゼンタール監督が語った。
同作は、妻と別れ、農場を失ったジョン(サム・ロックウェル)が、バージニア州西部で密猟しながら生計を立てていたある日、山奥でシカと誤って若い女性を射殺してしまい、その死体を隠すが、彼女の持ち物であったスーツケース一杯の紙幣を盗んだことで、さまざまな問題に巻き込まれていくというサスペンスドラマ。原作者マシュー・F・ジョーンズの同名小説を、デヴィッド・ローゼンタールが映画化した。
今作では原作者マシューが脚色も担当しているが、どの程度原作に忠実なのか。「僕は原作を読む前に脚本を読んだんだ。だがその脚本にも、原作の繊細な文学的内容が記されていた。文面は実際にバージニア州西部に居るような感覚になるほど詳細で、さらにキャラクターがもたらす会話が素晴らしかった。(後に原作を読んでみて)マシューがそんな素晴らしい会話を、脚本にも盛り込んでくれていたのが良かった」と、かなり原作に忠実であることを語った。
サム・ロックウェルのキャスティングについて「彼はコミカルな役から、映画『ジェシー・ジェームズの暗殺』などのシリアスな役までこなす幅広い演技をする。僕は特に彼のダークな役柄に惹(ひ)かれ、事前に彼と話し合いながらジョンという役柄を二人で導き出していった。彼はこの映画のために実際に狩猟に行き、バージニア州のアクセントも覚えてくれた」と明かした。
映画の設定はバージニア州西部だが、カナダのバンクーバーで撮影した理由は「今日では税金などの理由で原作とは違う場所で撮影されることも多いが、今作は製作資金上、バンクーバーで撮影した。だが、バンクーバーにある山林は驚くほど素晴らしく、常に山林は雲や霧に隠れていて、スリラー作品を描くうえで良い背景となった。ただ、この原作にあるバージニア州西部の小さな街は、特定の外観を持っていたから、(原作と外観が異なることを恐れ)バンクーバーでの撮影の際には、街の全体を映したワイドショットは撮らなかった」と答えた。
映画は、大金を手に入れた“強欲”と、妻と農場を失ったことで、そのプライドを保とうとする“傲慢”の狭間で、主人公ジョンが道徳心を問われる過程が興味深く描かれている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)