ボルドーワイン各社が中国市場に興味を示した理由とは?話題のドキュメンタリー映画の監督を直撃!
昨年のトライベッカ映画祭で真っ先に配給が決まった、ワイン業界を描いた話題のドキュメンタリー作品『レッド・オブセッション(原題) / Red Obsession』について、共同監督の一人ワーウィック・ロスが語った。
同作は、リーマンショック後にフランス南西部ボルドーにあるシャトー・マルゴー、シャトー・ラフィット、シャトー・ラトゥールの各社が中国に新たな市場を見いだし、通常の戦略で中国にワインを浸透させる道を模索するさまを描いている。ナレーションはラッセル・クロウが務め、ワーウィック・ロスが初のドキュメンタリー作品に挑戦した。
本作の製作経緯について「ボルドーワインを生産する各社が、中国の変革に大きな市場を求めていることを知り中国に乗り込んだが、まず飲食の安全性に疑問を持った。ボトルの中には、ブドウが含まれない着色されたアルコールを、ワインとして売っている状況だった。その点だけでも映画はできるが、中国に約3億人いる中産階級の成長が、世界市場にどのような影響を及ぼすかをワインを通して描きたかった」と答え、さらにボルドーワインは富裕層が飲むことが多いが、中産階級の成長がワイン業界に影響を与えたと語った。
ボルドーワインの各社が中国市場に目を向けた理由は、「中産階級の成長を含めた中国の発展が、中国の消費者のステイタスを向上させ、彼らの興味が高級ブランド品からワインへと移った。特に、ワインを西洋文化として学ぶ人たちからの注目度が増していた。ボルドーワインの各社は、これまでもさまざまな社会状況や環境に適応し、常に新天地を開拓していたため、リーマンショック後、世界中のほとんどのワイン会社が大打撃を受けた中、あまり影響は受けなかった。そして、リーマンショックの影響をさほど受けなかった中国に目を向けたんだ」と語った。
ラッセル・クロウがナレーションを務めた経緯は「彼はワインを扱った映画『プロヴァンスの贈りもの』に出演し、ワインも大好きだ。実は僕の親友でこの映画の製作総指揮を務めたロバート・コーと、彼は家族ぐるみの付き合いをしていて、それが決め手となった。彼は僕らの映画を鑑賞して、気に入ってくれたよ」と語った。ラッセルのナレーションが今作の質を上げている。
映画はワインの製造過程よりも、むしろビジネスサイドに焦点を置いており、これまでと違ったワイン業界を扱った作品として注目すべきだ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)