坂本龍一、30年ぶりに『戦メリ』を鑑賞!思い出を語る
ミュージシャンの坂本龍一が、第70回ベネチア国際映画祭クラシック部門で上映された出演作『戦場のメリークリスマス』(大島渚監督)の思い出を語った。同映画祭コンペティション部門の審査員を務めるため現地入りしていた坂本は、『戦場のメリークリスマス』が完成した1983年以来、実に30年ぶりに同作を観賞したという。
エンドロールが始まるや、脱兎(だっと)のごとく上映会場を後にした坂本。その理由について「当時のことを生々しく思い出し、感情的に高まり過ぎてしまって……。劇場が明るくなる前に逃げ出しちゃいました」と照れ笑いで明かした。
同作は坂本の俳優初挑戦作であり、その後の映画音楽家としての道を切り開いた代表作である。1983年の第36回カンヌ国際映画祭コンペ部門に出品され、坂本も大島監督らと共に現地入りした。今回、カンヌと並ぶ三大映画祭に審査員という立場で参加した坂本は、当時のことをまざまざと思い出したという。
それは、批評家などの下馬評で最高賞(パルムドール)は間違いナシといわれながら、いざふたを開けてみたら今村昌平監督作『楢山節考』が受賞したという苦い記憶だ。坂本は「発表の昼12時ぐらいからみんなでワインを開けて祝杯をあげていたんですけど、結果を聞いてみんな、暗くなっちゃった(苦笑)。批評家や観客の反応は良くても、審査員には評判悪かったのかなと今回審査する立場になって気付き(ぬか喜びしたことを)反省しました」と笑い、当時を懐かしんだ。
その大島監督は1994年の第51回ベネチア映画祭コンペ部門の審査員を務めており、くしくも19年後に、坂本も同じ役割を担う立場になった。最後に坂本は「一つ今年の映画祭で残念なのは、大島さんは今年1月に亡くなりましたけど、レトロスペクティブ(回顧上映)を行うなり、もう少し業績をたたえてほしかったですね」と寂しさをにじませていた。(取材・文:中山治美)