渡辺謙&佐藤浩市が監督のスパルタ演出について本音でトーク!ビンタは全て本気!
第65回アカデミー賞で作品賞をはじめ4冠に輝いたクリント・イーストウッド監督・主演の同名作を、李相日監督が新たに映画化した『許されざる者』で映画初共演を果たした渡辺謙と佐藤浩市が、極寒の北海道で行われた過酷な撮影を振り返った。本作は、明治維新後、武士という身分をはく奪された者たちが流れ着いた蝦夷地を舞台に、かつて自らの刀で多くの人の命をあやめてきた男たちの悲しい戦いが描かれる。
時に氷点下にもなった北海道・上川町に作られた巨大オープンセットでのロケは、百戦錬磨の名優二人が「記憶も定かではない」と振り返るほど、苦しい撮影となった。中でも町にやって来た元幕府軍の残党で主人公の十兵衛(渡辺)を見つけた警察署長・一蔵(佐藤)が、十兵衛に徹底的な暴力を与えて完膚なきまでにたたきのめすシーンの撮影は、あまりの過酷さに、「死の恐怖すら覚えた」と渡辺は語る。
渡辺は「決められた型を単純に再現するだけだと、それ以上のものは生まれない。李監督からは「痛みや砂をかむような思いが、そこにあるのか」と追求されましたから、全部本気でした」と殴られるフリではなかったことを告白。佐藤も「一蔵が殺す手前で止めるというラインに到達するには、十兵衛をたたきのめす中で、この男はもはや抜け殻だと一蔵が思えるかどうかが重要だった。だからこそビンタは全て本気でやっていました」と振り返る。そんな李監督、渡辺、佐藤のストイックな姿勢が、鬼気迫るシーンを生み出したといえる。
撮影から約1年を経てついに完成した本作。渡辺は「今回は達成感というよりも虚脱感の方が大きい。今は国立競技場にランナーが入ってきたときのような感じ」と話し、佐藤もまた「撮影のときも、自分が先にクランクアップを迎えたのですが、しばらくして謙さんから、撮了したよっていうメールが来たときはうれしくて、本当に良かったなって思いました。やっとここまでたどり着いたという思いが強いです」としみじみ。日本の映画界をけん引してきた名優2人の、映画への情熱をスクリーンで体感してほしい。(編集部・森田真帆)
映画『許されざる者』は全国公開中