ネズミが野菜を収穫し、人間の足は自由自在に伸びる!?ミシェル・ゴンドリーの新作映画は不思議映像のオンパレード!
世界中に熱狂的なファンを持つボリス・ヴィアンのベストセラー小説「うたかたの日々」を映画化した『ムード・インディゴ うたかたの日々』の監督を務めたミシェル・ゴンドリーが、スペシャル動画の中でその独創的な映像表現に隠された秘密を明かした。
ミシェル・ゴンドリー監督、オドレイ・トトゥが語る『ムード・インディゴ うたかたの日々』の秘密
例えば、主人公コラン(ロマン・デュリス)の日常シーンでは、食卓の上でオブジェのような料理がクルクル回り、引き出しを開けるとペットのネズミがミニチュア菜園でせっせと野菜を収穫。さらには、登場人物の足が長く伸びるユーモラスなダンスシーンや、教会で愛を誓ったコランと新妻クロエ(オドレイ・トトゥ)が、突然水中を歩き出すロマンチックな結婚式など、ゴンドリー監督による映像マジックが満載で、胸が躍るようなワクワク感を味わえるのだ。コマ撮りアニメの手法を取り入れたアナログなタッチも、何ともいえないぬくもりを醸し出している。
コランとクロエのラブストーリーをイマジネーション豊かに描いた本作だが、クロエが「肺の中にスイレンの花が咲く」という奇病に侵されてしまう物語の後半では、ポップでカラフルだった世界がモノクロへと変化していく。このコントラストについてゴンドリー監督は、「人生の残酷な部分を描くために、華やかな映像と暗い映像を対比させる演出をした」と現在配信中のスペシャル動画内で明かしている。山もあれば谷もある、まさに人生そのものを映像で見事に表現してみせたのである。
カクテルを作るピアノ・恋人たちを運ぶ雲といったアイテムが登場する摩訶(まか)不思議なイメージの中で、愛し合う二人の運命を切なくもピュアにつづり、「映像化するのが夢だった」とゴンドリー監督に言わしめたヴィアンの原作。日本でも岡崎京子が漫画化するなどクリエーターの創作意欲をかき立てる恋愛小説の名作が、映像の魔術師によってどのように映画化されたのか、ぜひとも確認してもらいたい。(斉藤由紀子)
映画『ムード・インディゴ うたかたの日々』は、10月5日より新宿バルト9、シネマライズほかにて公開