塩谷瞬主演『ゼウスの法廷』がロンドンでワールドプレミア!司法の腐敗を告発
塩谷瞬らが主演を務めた映画『ゼウスの法廷』のワールドプレミアが、ロンドンで開催中の第21回レインダンス映画祭で行われた。上映後には、高橋玄監督が質疑応答を行った。
塩谷が若き裁判官を演じた本作は、効率重視で十分な時間をかけずに判決を下す日本の司法を告発するもの。高橋監督は「以前、警察腐敗(『ポチの告白』)をやったのですが、結局、その上の裁判所が正常に機能していれば、それを防げるわけですよね。ところが、裁判所がダメだから、警察犯罪もなくならない。より大きな問題を批判しようという意味があります」と意図を語った。
「ドキュメンタリーでやろうとは考えなかったのか?」という質問には、「わたしはテレビでドキュメンタリーもやったことがありますが、ドキュメンタリーの方が本当のことが撮れないのです」と意外な回答。「簡単に言えば、日本の場合は裁判の撮影ができない。公判なのに。ドキュメンタリーでこういうことをやろうとしても、必ず妨害されますから、かえってフィクションの方が本当のことが言えると僕は常に思っています」と説明した。
さらに「この映画もフィクションですが、起きる出来事は本当にあったことを使っています。僕はジャーナリストとしての活動もしていますから、自分の知識、経験としてあった裁判の問題、警察の問題を再編集しているんです」と本作が事実に基づくフィクションであることを強調した。
シリアスなタッチの『ポチの告白』とは違い、ところどころ笑えるシーンもある本作。中でも時間に追われる裁判官(塩谷)が、婚約者(小島聖)からの夜の誘いに対し「11分」と応じるシーンでは爆笑が起こった。「“売春婦の仕事は11分”と書かれた『11分間』というパウロ・コエーリョの小説があり、そこから採りました。パウロとはメル友でもあります」と高橋監督は明かした。
また、本作で描かれる司法の腐敗に憤るあまり「どうして陪審制ではないのですか」と映画を超えて日本の司法制度そのものを問う観客も出た。高橋監督は「それは総理大臣にでも聞いてもらわないと。僕にはわかりません」と苦笑していたが、彼が本作に込めた思いはロンドンの観客にも十分伝わったといえそうだ。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)
映画『ゼウスの法廷』は2014年2月シネマート六本木ほかにて全国公開