ジブリ配給のスペインアニメ監督、高畑勲と古民家を訪ねた思い出を明かす
三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー配給で全国公開され、話題になったスペインのアニメーション映画『しわ』のイグナシオ・フェレーラス監督が来日し、尊敬する高畑勲監督との忘れられない思い出を語った。
同作は、認知症の老人を主人公に、老いに対してどう向き合っていくべきかというシリアスなテーマを、ぬくもりのある手描きアニメーションで表現した感動作。日本でも公開前から反響を呼び、高畑監督は「わたしはひとりの老人として、人間として、そして一アニメーション従事者として、映画『しわ』に心から敬意を表します」と称賛の言葉を寄せていた。
幼い頃から高畑作品を観て育ったというフェレーラス監督は、高畑監督に初めて会ったときは尊敬するあまり何も話せなかったというが、「ある日、高畑さんから『君に日本の古民家を見せたい』ということである場所に案内され、自身の子ども時代の思い出や日本の歴史などを語ってくれた。それから徐々に親交を深められたような気がする」と高畑監督との意外なエピソードを明かした。
さらに「これは高畑さんご本人に直接言えなかったことだけど……」と前置きしたフェレーラス監督は、「もしも機会があるならどんな形でもいいから、高畑作品にチームの一員として関わってみたい。現場を共有することで、初めて作品について対等にお話ができると思うから」と照れくさそうにラブコールを送った。
今回、日本で本作のブルーレイ&DVDが発売されることになったことに対しては、「この作品の可能性がさらに広がると思っている。例えるなら、ボトルにメッセージを書いて海に投げ入れるイメージ。5年後、10年後、誰かが受け取って心に刻んでくれたらうれしいこと」と語り、「わたしと高畑作品との出会いがまさにそうだったから」と期待を寄せた。
最後に、先頃長編からの引退を表明した宮崎駿監督について話が及ぶと、「誰にでも必ずその日がやってくるが、彼の新作がもう観られないのは本当に寂しい」と無念の表情を見せたフェレーラス監督。ただその反面、「最近、『カラフル』と『河童のクゥと夏休み』を観て、原恵一監督の存在を知った。彼のような才能あふれる監督が日本にはたくさんいる」と目を輝かせ、改めて日本のアニメーション界の奥深さに感心しているようだった。(取材・文:坂田正樹)
映画『しわ』ブルーレイ&DVDは11月6日発売 ブルーレイ:4,935円(税込み)、DVD:3,990円(税込み) 発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン (C) 2011 Perro Verde Films - Cromosoma, S.A.