テオ・アンゲロプロス監督の遺作配給に東映・岡田社長「収支のことを考えず、芸術にささげる」
ギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロス監督の遺作『エレニの帰郷』来日記者会見が22日、東映本社で行われた。監督夫人でプロデューサーのフィービー・エコノモプロス、監督令嬢でプロダクション・コーディネーターのアンナ・アンゲロプロス、アンゲロプロス作品全ての字幕を担当した作家の池澤夏樹、そして本作を配給する東映の岡田裕介社長が出席し、亡き巨匠をしのんだ。
昨年1月24日、新作映画の撮影中に、交通事故のため亡くなったテオ・アンゲロプロス監督。2008年に製作され、彼の遺作となった本作の配給に名乗りを上げたのは、これまで数々の娯楽映画を手掛けてきた東映だった。アンゲロプロス監督の大ファンだったという岡田社長は「(娯楽の東映から)芸術の東映に変貌を遂げてからやろうと思った」とジョークを交えて意気込みを語る。
本作の公開日である来年1月25日は、アンゲロプロス監督の命日の翌日にあたり、岡田社長は「この映画は収支のことを考えずに、彼の芸術にささげるという意味合いでいいと思っている」と宣言。また、監督の逝去により未完となった『ジ・アザー・シー(英題) / The Other Sea』について「もしも故人の遺志を継ごうというプロジェクトがあったら?」という仮定の質問が飛び出すと、「うちも1部上場会社なので承認を得ないといけないが、できる限りのことは協力したい」と前向きな姿勢を見せた。
一方、フィービーは日本公開決定について「最後の作品がやっと日本で公開されることになって、大変うれしく思っています」と涙で瞳を潤ませながらあいさつ。またアンナも「前回、日本に来たのは21年前。そのときわたしは子どもでしたが、父と来たことを覚えています」と感激した様子を見せた。
アンゲロプロス監督が日本をこよなく愛していたことを明かしたフィービーは「特に日本の観客は他の国の観客と違って、いちいち説明しなくても直感でありのままに、深い部分まで自分の映画を理解してくれるのがうれしかったそうです」と振り返っていた。(取材・文:壬生智裕)
映画『エレニの帰郷』は2014年1月25日より新宿バルト9ほかにて公開