柳楽優弥、カンヌ受賞後の苦悩を語る「才能という言葉が大嫌いになった」
16日公開の映画『ゆるせない、逢いたい』でデートレイプ(顔見知り同士による性的被害)の加害者となってしまう青年・隆太郎を演じた俳優の柳楽優弥が、『誰も知らない』で第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を史上最年少で受賞してから約10年の苦悩や、本作への思いを語った。
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柳楽にとって約3年ぶりの主演映画となる本作は、デートレイプというセンセーショナルな題材を扱っているが、中心にあるのは10代のはつ実と隆太郎のラブストーリー。「もちろん良くないことですけど、隆太郎が事件を起こした理由が全くわからないかって言ったら、ちょっとはわかるっていう人はいると思うんです」と柳楽が言うように、二人の意図せぬ行き違いがどちらにも不幸な事件を引き起こしてしまう。
「隆太郎はいかにも事件を起こしそうなタイプではなく、周りの大人たちから『よく働いているね』って言われるようなタイプ。そういう人間が一瞬の迷いや間違った判断で、残酷な行為をしてしまうっていうのは本当に怖いと思います。でも、それは隆太郎だけではなく、みんなにもあるような気がします」と柳楽は語る。
本作は、まだ経験が浅く、混乱や過剰な反応をしてしまいがちな10代を描いた作品でもあるが、柳楽自身もこの時期を大きな渦に巻き込まれるようにして過ごしてきた。「僕はもう10代で“才能”という言葉が大嫌いになりました」という彼の言葉からは、カンヌでの受賞で突如浴びた脚光が逆にプレッシャーとなり、彼にもたらした苦悩が伝わってくる。
「こんなに都合よく使われる言葉はないし、10代から(俳優業を)やるもんじゃないと思いました」と言う柳楽は、その言葉通り体調を崩して演技から離れたり、激太りが報じられた時期もある。しかし、昨年出演した蜷川幸雄演出の舞台「海辺のカフカ」をはじめ、本作や映画『許されざる者』の撮影を通じて、「これが本当にやりたいことだったんだなっていう確認が自分の中でできました。幸せなことだと思っています」と今では苦悩を乗り越え、演技ができることに対して感謝しているようだ。
今年は本作のほか、映画『爆心 長崎の空』『許されざる者』と計3本の出演作が公開。精力的な活動と出演作の増加は、柳楽のそうした前向きな気持ちの表れか。本作を携え、モロッコで行われるマラケシュ国際映画祭にも参加する柳楽は、「マーティン・スコセッシが審査員長ってスゴいですよね。会えたらいいな」と苦しみを抜けた、鮮やかな笑顔を見せていた。(取材・文:長谷川亮)
映画『ゆるせない、逢いたい』は11月16日より全国公開