監督が明かす世界中の新聞紙に掲載された「カルビンとホッブス」の映画とは?
世界中の新聞に掲載されたコミックストリップ、「カルビンとホッブス」を題材にしたドキュメンタリー映画『ディア・ミスター・ワターソン(原題) / Dear Mr. Watterson』について、ジョエル・アレン・シュローダー監督が語った。
本作は、1985年11月18日から1995年12月31日までアメリカの地域新聞から世界中の新聞に掲載されたビル・ワターソンのコミックストリップ「カルビンとホッブス」の世界観を掘り下げ、さらに今作に影響されたコミック作家やファンのインタビューを通して、商業化を嫌い、表舞台に顔を出さないビル・ワターソンに迫っていくというもの。
ジョエル監督はカルビンというキャラクターに惹(ひ)かれたらしい。「1985年に同作の掲載が始まったが、カルビンはずっと6歳のままで、僕も読み始めた当時は6歳、さらにカルビンは僕と同じ金髪、僕は学校の成績が良く、カルビンもまたスマートで、カルビンに個人的なつながりを感じていた。ある意味、当時の僕は彼になりたかったんだ。まるで自分を投影したような存在だった」と答えた。
そんな憧れから、本作への製作につながった経緯は「コミックを展示したサンフランシスコのカートゥーン・アート・ミュージアム、オハイオのビリー・アイランド・カートゥーン・ライブラリー&ミュージアムを訪問した際に、コミックストリップをアートと評価し、一般の人がすぐに捨ててしまう単なる新聞紙のコミックストリップという低評価がされていないことが新鮮だった。さらに『カルビンとホッブス』のファンは今作だけでなく、コミックストリップに関連したアートやさまざまなことに興味を示している。だから僕は、観客にこの映画でコミックストリップにアートの可能性を見いだしてほしい」と答えた。
ビル・ワターソンが「カルビンとホッブス」を商品化しない理由について「彼のコミックストリップは、彼の思い通りに全て描かれ、彼自身もこのコミックストリップの形態を尊重している。だが彼の作品を映画化すると、カルビンの動きのタイミングなどをどう描くか全くわからない。それに、彼のコミックストリップを読者が読んだ場合は、読者がそれぞれの箇所を自分の想像で膨らませていき、そこで作者と読者の接点が生まれるんだ」と明かした。
映画は、コミック作家ビル・ワターソンのこだわったコミックストリップの世界観をさまざまな角度から余すことなく描いた秀作に仕上がっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)