J・J・エイブラムスが原案を担当した小説「S.」とは?
映画『スター・トレック』シリーズなどでおなじみのJ・J・エイブラムスが、原案を担当した小説「エス(原題) / S.」について語った。
エイブラムス監督作品『SUPER 8/スーパーエイト』写真ギャラリー
本作は、会ったことのない2人の男女が、1949年に出版された古い小説の余白にメモを書いてコミュニケーションを図っているうちに、この小説を通して近代の陰謀説という未知の世界に足を踏み入れていくというもの。
この小説の原案について「15年前に空港に居たとき、ある本を読んでいると、(前に読んでいた人がこの本を気に入って)『この本を見つけた方は、読んだ後 、次の誰かが読めるようにどこかへ持っていってください』と書いてあったんだ。また、大学時代に図書館で他の人がチェックマークやハイライトを本に記したりしているのを見て、僕はその意味を想像したこともあった。これらのことがしばらく脳裏にあって、今から4、5年前に、この話を僕の製作会社バッド・ロボットのフィーチャー部門担当のリンジー・ウェバーに話したら興味を示してくれて、作家ダグ・ドーストを紹介してくれたことから、この本の共同製作が始まった」と明かした。
ミステリーやラブストーリーが含まれていることについて「この本には、1949年に出版された小説が含まれていて、この本の主人公二人が記したメモを読者が想像できるように、手紙、ノート、大学新聞の切り抜かれた部分などが小説に挟まれているんだ。この本自体が、ラブストーリーの象徴みたいになっている」と語る通り、斬新なアイデアに思える。
映画の監督、脚本家、プロデューサーとして活躍するJ・J・エイブラムスが、小説に関わった意図は「これまでも小説を手掛けるうえで、過去の作品にも実験的な試みをしたものがあったと思うが、この小説の手法はかなりユニークだと思っている。もし僕がやらなければ、誰かがやると思っていた。もちろん、完成したのは僕の想像以上の質になり、デザインも素晴らしいが、あくまで映画化するものではない」と自信をうかがわせた。
小説は、読者が直接にメモや手紙に触れることで、小説に記された陰謀説を自らひも解いている気にさせてくれる興味深い作品だ。小説「S.」は、10月29日から全米発売されている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)