小津映画のローポジションを体感 生誕110年・没後50年で展覧会開催
映画『東京物語』などの巨匠・小津安二郎監督をデザインの側面から読み解く展覧会「小津安二郎の図像学」が12日、京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで初日を迎えた。
今年は小津監督の生誕110年、没後50年という節目の年。さらに今日12月12日は監督の誕生日であり、命日でもある。展覧会を企画したフィルムセンターの岡田秀則主任研究員は「小津安二郎という作家は、没後に多くの評論がなされてきた。今回の展覧会は、小津がどのように演出を行ったのか、小津の美学はどのように生まれたのかを検証する機会となります」とその意図を説明する。
さらに「小津はタイトルの文字を自分で書き、劇中に登場する飲み屋の看板のデザインも自分で手掛けるなど、デザイン性の高い人でした」と解説する岡田氏。その言葉の通り、会場では「絵画」「図案」「文字」「色彩」というキーワードをもとに監督の美的感覚を紹介。小津監督自身がデザインを手掛けた映画のタイトル、自作映画に登場する小道具、看板などを紹介し、グラフィックデザイナー的な側面も明らかにしていく。
さらに映画『秋刀魚の味』『浮草』『お早よう』などにおける、監督直筆の絵コンテも展示。そこでは赤・青・緑など、登場人物がカットごとに色分けされており、小津監督が色彩を演出に生かしていたことが明らかにされている。
また会場では、小津監督がデザインを手掛け『秋刀魚の味』のセットで使われた看板の再現・展示も行っている。これは東野英治郎演じる老教師が経営するラーメン屋「燕来軒」と、佐田啓二が会社の同僚と食事をする「とんかつ屋」の看板で、その解説には「しゃがんで看板を見てください。このかなり大きな看板が安定したものに感じられます。これが小津映画独特のローポジションの効果です」と記載されている。(取材・文:壬生智裕)
展覧会「小津安二郎の図像学」は2014年3月30日まで東京国立近代美術館フィルムセンターにて開催中