「家宅侵入」映画はなぜハマるのか?限りなく身近な恐怖に戦慄!
穏やかな日常が悪夢へと変わる恐怖をテーマにしたスリラー映画のジャンルでは、登場人物が脅かされる場所、すなわち状況設定が重要な要素となるが、その設定を検証してみた。
身近な家宅侵入の恐怖!映画『ブラインド・フィアー』戦慄のフォトギャラリー
作り手たちが斬新なアイデアを競い合い「シチュエーションスリラー」なる言葉が生まれたのも、状況設定が物語のカギを握るためだ。ではわたしたち観客にとって、最も脅かされたくない場所はどこだろうか。その答えを突き詰めれば、おのずと最も怖い設定が導き出される。そう、外出から帰ってホッとひと息つき、身も心も無防備になる空間、すなわち「自宅」である。
自宅にこもった主人公が謎の敵に追い詰められる家宅侵入スリラーは、古くから数多く作られてきた。とりわけ『らせん階段』(1945)『暗くなるまで待って』『見えない恐怖』は古典的名作として知られている。いずれも孤立無援のか弱い女性が主人公で、視覚障害などの身体的ハンデを抱えている設定がいや応なく観る者の不安をかき立てる。
電話をかけてきた不審者がすでに身近に潜んでいた、という都市伝説に基づく『夕暮れにベルが鳴る』(『ストレンジャー・コール』はそのリメイク)も怖い。『スクリーム』でドリュー・バリモアが殺害される冒頭シーンでも同様の恐怖が描かれていた。その後の家宅侵入映画には『ファニーゲーム』『パニック・ルーム』『屋敷女』などがあり、『ハロウィン』(1978)『サプライズ』(2011)のように侵入者にマスクをかぶらせてホラー色を強めた作品もある。
そして近年は「ホーム・インベージョン」とも呼ばれるこのジャンルの最新作が『ブラインド・フィアー』だ。ミシェル・モナハンが『暗くなるまで待って』のオードリー・ヘプバーンを思わせる盲目の女性にふんし、大都会のペントハウスで非情な犯罪者との絶望的な戦いを繰り広げる。ジョセフ・ルーベン監督の職人技がさえるこの映画は、シンプルな設定と俳優の演技を重視して原点回帰した王道的作品で、入門編としても最適の一作だ。自宅にいればどこよりも安心という固定観念を覆す家宅侵入映画は、今後もスリラーの代表的なサブジャンルとして重宝され、リアルで濃密な恐怖を突き付けてくるに違いない。(高橋諭治)
映画『ブラインド・フィアー』は、1月11日より新宿バルト9ほかにて全国公開