高校時代にNBAスター選手レブロン・ジェームズと共に将来を嘱望された男を描いたドキュメンタリーとは?
10年以上前に高校バスケットボール界で話題になったレニー・クック選手が、自身を題材にしたドキュメンタリー映画『レニー・クック(原題) / Lenny Cooke』についてプロデューサーのアダム・ショップコーンと共に語った。
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本作は、 2001年の高校バスケットボール界で現在のNBAスター選手、レブロン・ジェームズやカーメロ・アンソニーらと並びスカウトやメディアに注目されていたレニー・クックが、結局一度もNBAでプレーすることがなかった現実を描いたもの。共同監督ベニー&ジョシュア・サフディーがメガホンを取った。
カーメロ・アンソニー選手との交流についてレニーは「カーメロは今でも高校時代と変わらずに接してくれる。今作が完成したことについても、NBAで成功していない僕には相応しくないとは思わずに、喜んでくれた。彼はNBA選手になるため一生懸命に練習したことで今の地位がある」と答え、自身がNBA選手になれなかった理由については「僕は一生懸命に練習せず、バスケにあまりこだわってなかった。当時、もし誰かに『100ドルやるから遊びにいかないか?』と言われたら、付いていって練習をさぼるほどだった」と語ったが、現在は全米の高校や大学を回り、将来のNBA候補に自分と同じ過ちを繰り返さないように助言をしている。
製作経緯についてアダムは「2000年のニューヨーク・タイムズ紙に高校のバスケ選手が、いきなりNBA選手になることについての記事を読んだ。そこで、高校の候補生を探してドキュメンタリーを製作したら面白いと思ったんだ」と明かし、さらに「2002年のNBAドラフトでドラフトされなかったレニーとは連絡が取れなかった。それから6年後に、今作の共同監督ベニー&ジョシュア・サフディーの作品を映画館で観て惹(ひ)かれたことで、これまで撮った映像を彼らに委ね、監督を彼らに任せたんだ。それからレニーとの製作も再び可能になった」と話した。
今作を鑑賞してみて、レニーは「今作の製作は素晴らしかった。僕は人に関心をもってもらうことが大好きだ。僕の浮き沈みのある人生を撮影した彼らに感謝している。今は、NBA選手になれなかった自分の人生を観ることは困難ではないよ。なぜなら、僕のストーリーは次世代のNBA候補への戒めになると思っているから」と答えた。
映画は、後のNBAスター選手たちとプレーしていたレニーの過去と現在を克明に描き出し、夢破れた男の人生を敗者という観点で描いていない興味深い作品だ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)