『ハリポタ』敏腕プロデューサーが明かす『ゼロ・グラビティ』の裏側
今年度アカデミー賞の最有力候補に挙げられているサンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー共演の映画『ゼロ・グラビティ』でプロデューサーを務めたデヴィッド・ハイマンが、映画製作の醍醐味(だいごみ)を語った。「プロデューサーの役割は、監督をサポートすること」と明言するハイマンだったが、作品のどこかには自身の内面が刻印のように押されてしまうのだという。
ハイマンは2001年から10年をかけて、『ハリー・ポッター』シリーズ全作を映画化し、大成功を収めたことで一躍、敏腕プロデューサーとして知られるようになった。本作では『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』のアルフォンソ・キュアロン監督と再タッグを組み、宇宙を舞台に壮大な人間ドラマを作り上げた。現時点で興行収入はすでに全世界で6億ドル(約600億円)を突破しており、ハイマンにとっては『ハリー・ポッター』に並ぶ成功作となっている。(数字は配給調べ・1ドル100円計算)
しかし、こうした興行成績にもハイマンは「多くの人がこの映画に共感してくれるのは本当に素晴らしいことです。ですが、わたしが最も誇りたいのは、自分がこの映画が好きだ、ということなのです」と言う。「というのも、人は究極的には、自分のためにしか映画を作ることはできないとわたしは信じています。そうした場合、映画の製作者はその作品を他の人が好きになってくれるように祈ることしかできないでしょう? 逆に、最初から多くの人に好かれようとして作品を作るのは危険なことだと思いますよ」と持論を交えながら警鐘を鳴らした。
それはなぜなのか、という問いに、ハイマンは「映画製作に駆り立てるのは自分の内側にある何かです。外側にあるものによって駆り立てられたら、それは商品でしかないでしょう」とばっさり。だから『ゼロ・グラビティ』も、実は非常にパーソナルな作品だという。「この作品のスタートは、キュアロン監督による脚本でした。当時、彼はプライベートでとても難しい問題を抱えており、脚本にはそのことが反映されていたのです。宇宙という舞台は、そうした逆境を命が奪われるかもしれない極限状況という形で表現したものなんですよ」。
プロデューサーとしては前面に出ることなく、監督の補佐に回ることを第一にしているハイマンだったが、それでも作品には自身の色が出てしまうという。「わたしが関わった映画には、どこか世の中のルールから外れてしまったような人が出てきます。そして、立場は違えど互いを認め合い、協力する人々の絆の力がテーマになっています。それはわたしの内面を反映したものでしょう。『ゼロ・グラビティ』もそうですが、そうしたものを観るのは、自分のことながらどこか気恥ずかしさがありますね」と本作が完成したときのことを振り返っていた。(編集部・福田麗)
映画『ゼロ・グラビティ』は12月13日より3D / 2D同時公開