作家・中沢けい、初の映画化作品『楽隊のうさぎ』にしみじみ 仕上がりに太鼓判
14日、渋谷ユーロスペースで行われた映画『楽隊のうさぎ』初日舞台あいさつに鈴木卓爾監督、宮崎将、山田真歩、そして音楽監督の磯田健一郎が来場し、感慨深い様子を見せた。
本作は中沢けいの人気小説を原作に、引っ込み思案の中学生が吹奏楽部に入部することで、音楽の面白さに夢中になっていく姿を描いた青春映画。劇中に登場する46人の吹奏楽部の生徒はオーディションで選出。演技経験のある子もない子も、そして楽器の演奏ができる子もできない子も、全員が約1年かけて練習に励み、「花の木中吹奏楽部」を見事に再現した。
そんな足掛け2年近くにもおよぶプロジェクトがようやく完成し、東京での初日を迎えたことについて鈴木監督は「本当に長い時間をかけて、一つの吹奏楽部を作り上げ、それをどう僕たちが見つめることができるのか。どういう響きができるのか。壮大な実験のような、壮大な映画作りになりました」と晴れ晴れとした表情を浮かべた。
この日の客席には、原作者の中沢の姿も。司会者からあいさつを求められた中沢は「いつも映画を観ているこの劇場で、何であいさつをしているのか不思議です」と照れくさそうに切り出すと、初の映画化となった本作について「すごくいい映画を作っていただいたと思います。映画と小説は別物だと思えと大学生の頃から言われてきました。実は映画化の企画だけで37本ほどいただいていて、予算までついたのに、著作者の権限でつぶしてしまったこともあって」と明かし、会場を笑わせた。
続けて中沢は「鈴木監督がすごくわかっていてくれたんで、安心だなと思いました。撮影現場を見ても『わかっているなぁ』、芝居も『わかっているなぁ』と。ぜひとも皆さんに楽しんでいただければと思います」と原作者からのお墨付きを与えていた。(取材・文:壬生智裕)
映画『楽隊のうさぎ』は渋谷ユーロスペースほか全国順次公開中