カット数はわずか74!『コヤニスカッティ』ゴッドフリー・レジオの新作は主役と背景が逆転!
映画『コヤニスカッティ』で名をはせたゴッドフリー・レジオ監督が、新作『ヴィジターズ(原題) / Visitors』について、プロデューサーのジョン・ケインと共に語った。
ゴッドフリー・レジオ監督・脚本・プロデュース 映画『ナコイカッツィ』場面写真
同作は、斬新な撮影手法と作曲家フィリップ・グラスの曲を通して、人類の表情を描きながら超越した世界観を映し出していくドキュメンタリー。スティーヴン・ソダーバーグが製作を担当した。
人々に衝撃を与えた『コヤニスカッティ』など、これまでの作品と今作を比較してみて「もちろん、テーマや撮影手法はこれまでの作品とは違うが、(長回しなどの)形態や様相は以前の作品と似ている。例えるならば、ハンバーガーショップでハンバーガーを買えば当然のようにバンズの中に肉はあるが、この映画はハンバーガーの中に肉が無い映画だ。つまり、通常の映画では背景などを撮影している撮影第2班の映像が前景にあり、ビルなどの背景映像がトム・クルーズのように主役として撮影されている」とゴッドフリーが明かした。
今作はわずか74カットだが、その構成は「もし僕が撮影する前にどのような映画になるか予測できたら、僕にとっては製作すべき面白い映画とは言えない。作品はコラボ過程で生まれ、事前の論理的なアイデアを考えたりしない。むしろ(撮影)映像を通して自分を見つけられるかにこだわる。もちろん、その一見狂った撮影手法にもやり方はあって、撮影中(長回しの過程で)繊細な感受性とドラマ的な様相を見極めて映像として残す。その過程は言葉の組み合わせではなく映像の組み合わせで、レンズやフィルムのスピードにもこだわる」とゴッドフリーが語り、さらに注意深く観れば、自然に映像が話し掛けてくるとも答えた。
フィリップ・グラスの作曲についてジョンは「今作に関しては8~9年くらいフィリップと話し合った。撮影を開始すると、フィリップは撮影現場にも来たんだ。ある意味、サウンドトラックと撮影は同時に行われていた」と言うと、ゴッドフリーは「フィリップが居なければ、僕は製作ができなかった。僕の映画製作の中で、真髄的な存在だ。彼とのコラボによって映像が聞こえ、音楽さえも見えてくる(ありえないことが可能になる)とも思っている」と評価した。
映画は、何かを感じさせてくれるまで映像を見続けたくなる、感受性を問いただした究極の作品かもしれない。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)