注目の女優ブリット・マーリングが語る話題作『ザ・イースト』は環境汚染をもたらす企業に抗議活動を行うアナーキスト集団を描く問題作
映画『アナザー プラネット』『ランナウェイ/逃亡者』で注目の若手女優ブリット・マーリングが、話題作『ザ・イースト』について語った。
同作は、環境汚染をもたらす企業に抗議活動を行うアナーキスト集団イーストに、元FBIのサラ(ブリット・マーリング)が企業から依頼されて潜入するが、サラの上司シャロン(パトリシア・クラークソン)とアナーキスト集団のリーダー的存在ベンジー(アレキサンダー・スカルスガルド)とのはざまで、スパイ活動に葛藤する姿を描いている。ブリットは製作、脚本、主演に挑戦した。
製作、脚本、主演の全てを担当したブリットは、サラを客観的に描き、演じることができたのか。「サラは難しい役だった。これまでの脚本では、自分が女優として演じたい役柄を描いてきたけれど、今作でサラは、上司、ボーイフレンド、そして自分自身にもうそをついている設定なの。だからサラが正直でいられる静かなシーンで、観客に共感を持ってもらえる構成にするのが困難だったわ」と明かした。
女性の主人公が捜査する設定について「映画『ソルト』は好きだけれど、あれは完全に男性の観点から執筆され、それを女優が演じた感じだった。女性が主人公のスパイ映画は、常に男性の観点で描かれている気がするの。だからわたしたちは、この映画で主人公の女性が映画の経過とともに、より女性的になっていくように描いたの」と答え、さらに「今作では、サラと上司シャロン、サラとベンジーの関係を平等に描いていることで、サラが二つの世界の板挟みになっていることがわかるの」と語ったとおり、この板挟みの設定が映画をよりスリリングにさせている。
ネット世界を離れ、人との関係を大事にする今作のようなアナーキスト集団に魅力も感じるが、彼らが親との関係を絶っている点について、「彼らは、会社や社会のシステム、そして親元を離れ、より関係を親密にできる集団を選択した。わたしが撮影前に、実際にアナーキスト集団と共に過ごした時もそうだった。自分のことだけを考えずに、人と共に生きている感じが刺激的だったわ。でも、確かにそんな選択は興味深いけれど、逆に他の関係を置き去りにしている矛盾点もあるわね」と述べた。
映画は、理にかなったアナーキスト集団が、汚染をもたらす会社に抗議していく過程の中で、スパイ活動をするサラの微妙な心情が見事に描かれている秀作。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)