少年刑務所に不良少年少女を送り込んで、リベートを受けていた全米を騒がせた元判事とは?
全米で話題となったニュース「キッズ・フォー・キャッシュ」の問題を描いたドキュメンタリー作品『キッズ・フォー・キャッシュ(原題) / Kids for Cash』についてロバート・メイ監督が語った。
ロバート・メイが製作総指揮 映画『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』写真ギャラリー
本作は、ペンシルベニア州ルザーン郡の元判事マーク・チアバレラとマイケル・コナハンが、PAチャイルド・ケア社とウェスタン・ペンシルベニア・チャイルド・ケア社が運営する少年刑務所に、けんかなどをした不良少年少女を送り込み、賄賂やリベートを受け取っていた事実を描いたドキュメンタリー作品。映画『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』で製作総指揮を務めたロバート・メイがメガホンを取った。
このような事件が起こる背景には、1999年4月に起きたコロンバイン高校乱射事件があった。「あの事件後、学校での少年少女への規制がすべて変わった。チアバレラは1996年から判事となり、当初から犯罪や少年少女たちには厳しくとスローガンを掲げていた。そしてコロンバイン高校の事件後、ルザーン郡には同様の事件が起きないようにすると主張した。当初はルザーン郡のコミュニティーも、そんな彼の主張をサポートしていた」と明かした。
ところがチアバレラは、およそ3000人もの不良少年少女を、軽罪などを理由に少年刑務所に送り込み、そのリベートを受けていた。関わった少年少女たちとのインタビューの過程について「確かに話を共有してくれる少年少女(現在は大人もいる)を探すのは困難だった。まず少年少女の両親から許可をもらった。その後、少年少女と話すが、その中には出演したアマンダのような少女も居た。彼女は少女時代よく学校でけんかしたが、それだけの理由で少年刑務所に4年も入れられた。彼女はそんな体験をカウンセラーや親族にも話せなかったが、僕らには話してくれた」と時間をかけながら信頼を得たことを語った。
少年法で裁く過程で、弁護士がほとんど付いていなかった点について「軽罪を犯した少年少女や彼らの両親は、もし弁護士を付けると、余計に大ごとになるし、不良少年少女なら罰せられるべきと周りから言われ、弁護士を付けずにいたら、このような結果を招くことになった。ただ問題なのは、そんな少年少女たちに誰も関心を持たなかった事にもある」と答えた。
映画は、チアバレラにもインタビューを試みていて、軽罪を犯した少年少女たちの観点だけに偏らずに描いている点が興味深い。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)