“やらせ”問題の震災記録映画、上映中止を申し入れ…プロデューサーが発表
“やらせ”ともいえる過剰な演出があったことが明らかになったドキュメンタリー映画『ガレキとラジオ』のエグゼクティブプロデューサー・山国秀幸が、全ての主催者(41団体)に同作の上映中止を申し入れたことを映画の公式Facebookで発表した。映画公開から現在に至るまで、同作は趣旨に賛同した人々によって、全国各地で自主上映会が行われてきた。
山国は「被災地支援を目的に製作した映画が、逆に被災者の方を傷つけてしまっているという事が事実であれば、それは一番あってはならないと考えています。まずは、映画に出演頂いた女性に心よりお詫び申し上げます。申し訳ございません」と謝罪。問題となっている、ラジオの電波の届かない地域にいた女性を、放送を聴いて励まされている被災者として撮影するという演出については「ドキュメンタリーを逸脱したもの」という自身の考えを示した。
現在予定されている上映会については「報道内容や監督の見解、制作に関わって頂いた方々のお考えなどを考慮し、慎重に協議しました結果、全ての主催者の方々(41団体)に『上映会の中止』をお願いさせて頂きました」と発表。さまざまな考えや事情によりそのまま上映会を開催する主催者へは、上映前に今回の報道に対する監督からのコメントを紹介するなど、映画に出演した女性に最大限の配慮をお願いし、開催した場合の上映料や販売宣伝物は全て無償にすることにしたという。新規の上映会の受け付けは中止されている。
本作は、梅村太郎監督、塚原一成監督の「南三陸町の町民の方々を対象に、観た人が逆に勇気づけられるようなドキュメンタリーを撮りたい。それを長く全国に広めることで、震災風化を防ぎ復興支援につなげたい。自分たちは無報酬で構わない」という思いからスタートしたといい、山国は「この映画が好きで、復興支援に繋がればという想いで、昨日まで自信を持って紹介してきた私にとって、今回の内容とその反響の大きさに動揺しており、心の整理がついていない状況ではあります」と率直な思いを明かしつつも、「ただ、今回傷つけてしまった方々や東北の方々のことを常に念頭にして、今後も誠意を持って対応させて頂きたいと考えています」とコメントしている。
Facebookには、出演女性のほか、映画を観た人たち、本作の趣旨に賛同してボランティアでナレーションを担当した役所広司、音楽を提供したMONKEY MAJIK、映画を公開した劇場、上映会を開催してきた、そしてこれから予定していた主催者、映画に出演した人々をはじめとした南三陸町の町民、本作を応援した全ての人への謝罪の言葉が記されている。(朝倉健人)