全世界60以上の映画賞を総なめ!大量虐殺を再現させた衝撃ドキュメントの監督が来日
本年度アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされ、ベルリン国際映画祭観客賞ほか全世界60以上の映画賞を受賞したドキュメンタリー映画『アクト・オブ・キリング』の来日記者会見が20日、都内・日本外国特派員協会で行われ、ジョシュア・オッペンハイマー監督が出席した。
本作は、1960年代、インドネシアでひそかに行われた100万人規模の大量虐殺の加害者たちにカメラを向け、その再現をさせながら彼らの胸中や虐殺性の実態に迫る衝撃の長編ドキュメンタリー。オッペンハイマー監督による“凶行の再演”という独特のスタイルに加え、そこから浮かび上がる人間の心の闇に戦慄(せんりつ)が走る。
この映画を撮ることになった経緯についてオッペンハイマー監督は、「最初は虐殺から生き残った人々を取材し記録映画を作ろうと思ってインドネシア入りしたが、軍の圧力を受け、撮影が困難になった。ところが、その生き残りの方々から続けてほしい、できれば加害者側がどう思っているのか聞いてほしいという声が上がった」と述懐。身の危険にさらされるかもしれないという恐怖と戦いながら、加害者側にアプローチしてみると、意外なほどオープンに語ったという。
現地での撮影に関してオッペンハイマー監督は、「スタッフは少数精鋭の5、6人。できるだけ自然でローカルな形を撮りたかったので、現地の青年団や昼ドラのスタッフを起用した」と語り、「とにかく恐怖を感じない場を作ること。話し合う場がないと、お互いに和解は生まれないから」と細心の注意を払ったことを明かした。
また、本作の中心人物であり元殺人部隊のリーダー、アンワル・コンゴ氏は完成した映画をなかなか観ようとしなかったという。これに関してオッペンハイマー監督は、「いろいろな記憶がよみがえり、怖じ気づいてしまったようだが、先日スカイプを通してようやく観てくれた。観終わってから20分間沈黙した後、『いろいろな心の痛みはあったが、自分がやってしまったことの意味がきちんと描かれていてホッとした』と言ってくれたよ」と監督自身も安堵(あんど)の表情で語っていた。(取材・文:坂田正樹)
映画『アクト・オブ・キリング』は4月12日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開