東電に翻弄された家族の70年…福島出身監督と故・若松孝二監督の弟子による新作映画が公開
福島に生き、日本の原子力政策、そして東京電力にその人生を翻弄(ほんろう)されたある家族の、4世代70年間にわたる物語をつづった劇映画『あいときぼうのまち』が、6月21日より全国で順次公開されることが決定した。
本作は福島県出身で脚本家の菅乃廣が企画。1945年、1966年、2011年、そして2012年という4つの時勢を交差させ、戦時中のウラン採掘、原子力発電所建設への反対運動、そして東日本大震災と福島第一原発の事故という、原子力エネルギーをめぐる数々の出来事に傷つき、多くを失い、絶望しながらも生きていこうとする、ある一家の姿を描く。
菅乃は二十数年前、難病で死が迫る父親がつぶやいた「この奇病は昔原発で浴びた放射能が原因かもしれない」という一言をきっかけに企画を立ち上げたといい、本作で監督デビュー。さらに脚本は、故・若松孝二監督の弟子で、昨年『戦争と一人の女』で監督デビューを果たした井上淳一が担当する。
若松監督といえば、2012年におけるベネチア国際映画祭の席で、どうしても東電の話をやりたいと語り「誰もやろうとしないから本気になってケンカしてやろうと思っています」と宣言したことも話題に。同年、交通事故により急逝したことで思いは果たされず、井上は「原子力村をブチ壊すような映画がやりたいと言いながら、叶わずに死んでいった師匠の、弔い合戦」と思いを込める。
またオープニングテーマは、被災地への積極的な支援活動でも知られる坂本龍一が作曲した「千のナイフ」を、ピアニストの榊原大が演奏。キャストには、夏樹陽子、勝野洋、大谷亮介らベテラン陣に加え、新人の千葉美紅などバラエティーに富んだ俳優陣が集結している。(編集部・入倉功一)
映画『あいときぼうのまち』は6月21日よりテアトル新宿ほか全国順次公開