演技派女優リリ・テイラーが語る舞台仲間と撮影した映画とは?
映画『I SHOT ANDY WARHOL』、『死霊館』などでおなじみの演技派女優リリ・テイラーが、新作『ザ・コールド・ランズ(原題) / The Cold Lands』について、トム・ギルロイ監督と共に語った。
本作は、ニューヨーク州中部キャッツキル山脈の麓で暮らすシングルマザーのニコル(リリ・テイラー)と少年アティカス(サイラス・イェリック)の物語。質素ながらも自然に囲まれた平和な暮らしをしていた二人だったが、ある日ニコルが病気で亡くなってしまう。ふさぎ込んでいたアティカスは家に戻らず近くの森林で野宿の生活を試みようとするが、やがて風変わりな青年カーター(ピーター・スカナヴィーノ)と出会ったことで、普段の自分を取り戻していくというドラマだ。
素晴らしいロケーションにおける撮影についてトム監督は「実は、この映画で撮影された95パーセントは、僕の家から約10分以内の距離にある場所なんだ。主役を演じたサイラスは、僕が住んでいる丘の麓に住んでいるよ。それに撮影は、ほとんど友人や家族が中心になって行われていて、映像で使用された森林の奥地は、本来ならば自然保護の区域だが、特別に撮影許可をもらって撮影したんだ」と語る。自分が知り尽くした場所で、心ゆくまでの撮影を行ったようだ。
リリとトム監督は20年来の付き合いとのこと。「そうなの。わたしたちは同じシアターカンパニーに属して20年ぐらいになるわね」とリリが明かすと、トム監督は「僕がこの映画で監督する前に、リリは俳優としての僕を舞台で監督してくれたこともあった。共演者サイラスやピーターは、それぞれ僕なりの演出方法があったが、リリとはキャラクターについてだけ話し合い、僕が指示することもほとんどなかったほど信頼していた。彼女とは長い間こういう関係で仕事をしている」と答えた。
映画内ではアティカスと、風変わりで粗悪な性格のカーターとのやり取りが興味深い。「このようなタイプの青年だからこそ、少年が憧れるんだ。ただ最初に観客は、こんな性格の青年に対してはネガティブなイメージを抱き、なぜアティカスが惹(ひ)かれていくのかわからない。ところが、徐々にカーターの生き方とアティカスに対するカーターの価値観が、アティカスの母親ニコルに近いことに観客は気づかされていくんだ」とトムが語った。
映画は、自然と共存している人間の姿と、多感な少年の心情を見事に描いている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)