台湾版・小林旭が大活躍?日本の影響色濃い台湾語映画が日本初上映!
1966年に製作された台湾語映画『温泉郷のギター』(チョウ・シンイー監督)が先ごろ行われた第9回大阪アジアン映画祭の特集企画「台湾:電影ルネッサンス2014 台湾語映画、そして日本」内で日本初上映された。タイトルが示す通り、『ギターを持った渡り鳥』シリーズをコピーしたような台湾版・小林旭の活躍に、郷愁と笑いの渦が会場を包んだ。
台湾語映画は日本統治解放後の1950年代から、進駐してきた蒋介石の国民政府による北京語普及政策が浸透するまでの1970年代初頭まで約1,000本製作されたという。内容は『007』シリーズをはじめ世界で流行した映画のアイデアを「拝借」した、B級娯楽映画が中心。しかし歴史に翻弄(ほんろう)され続けてきた同国において、アイデンティティーを再認識する台湾語映画は大衆の支持を得て、人気スターや流行歌を生み出したという。
今回の上映は、北村豊晴が共同監督を務め、台湾語映画にオマージュを捧げた映画『おばあちゃんの夢中恋人』(2013・台湾)が同企画で上映されるにあたり企画されたもの。ただし1980年代に相次いで映画会社が倒産したこともあり、現存している作品は約200本。その中からフィルムの保存状態が良く、かつ日本映画の影響が色濃く出ている『温泉郷のギター』が選ばれたという。
本作は“台湾のハリウッド”と称された北投温泉を舞台に、借金取りに嫌がらせを受けている旅館を、流しの歌手が救う痛快アクション。主人公は旭というより石原裕次郎風で、劇中では台湾語版「嵐を呼ぶ男」も流れるという日活アクション映画のミックス版だ。しかし、当時の日本映画が海外でどのように受け止められていたのかを表す貴重な映像資料である。
日本語字幕の制作にも苦労した。翻訳担当の樋口裕子さんによると、脚本が存在しないため台湾語セリフを書き起こす作業から始まり、それを中国語に翻訳したものを樋口さんが日本語に。もっとも映画祭で上映できるのは、所蔵する台湾・国家電影資料館との契約により2回のみ。映画祭プログラミング・ディレクターの暉峻創三氏は「台湾語映画は日本と関係している作品が多い。いずれまとめて特集上映ができれば」と語り、知られざる台湾語映画の魅力を日本に広く紹介したいという。(取材・文:中山治美)