『アナと雪の女王』へと引き継がれたディズニーの伝統…伝説的アニメーター集団「ナイン・オールド・メン」の功績
最新作の『アナと雪の女王』がアニメーション映画史上最大のヒットを記録しているディズニー・アニメーション・スタジオ。その歴史は1923年と古く、去年創設90周年を迎えたことはよく知られている。だが、その黎明期を支えた伝説的なアニメーター集団「ナイン・オールド・メン」を知っているだろうか? ここでは『アナと雪の女王』の現在も連綿と続くディズニーの伝統、その礎を築いた彼らの業績を振り返る。
「ナイン・オールド・メン」が関わったディズニー映画フォトギャラリー
「ナイン・オールド・メン」の前身は、ディズニーのアニメーション部の管理を補佐するアニメーション幹部会で、こちらは1940年に設立。当初は議題ごとにメンバーが変更されていたが、1950年に9人のスーパーバイジング・アニメーターで固定されたことで、最高裁判所の9人の判事を指す言葉だった「ナイン・オールド・メン」という呼称が使われるようになった。
そのメンバーは、レス・クラーク、ウォルフガング・ライザーマン、エリック・ラーソン、ウォード・キンボール、ミルト・カール、フランク・トーマス、オリー・ジョンストン、ジョン・ラウンズベリー、マーク・デイビスの9人。彼らはディズニーの長編アニメーション第1作『白雪姫』(1937年)以前からディズニーで働いており、まさにディズニーの生ける伝説。全員が関わった作品こそ『シンデレラ』『ピーター・パン』しかないものの、長編アニメーション第24作の『きつねと猟犬』(1981年)までの作品には、彼らのうち一人は関わっていたので、その偉大さがうかがえる。
「ナイン・オールド・メン」はディズニー映画におけるアニメーションの基礎を固めたといっても過言ではないが、特に一つ功績を挙げるのならば、アニメーターの仕事を根本的に変えたことだろう。1940年代まで、ディズニーのアニメーションでは1人のアニメーターが1人のキャラクターを担当していた。だが、「ナイン・オールド・メン」の誕生以後は、1人のアニメーターが担当カットのキャラクター全てを受け持つようになり、これにより「キャラクター同士の掛け合いの妙」が、アニメーションにもたらされることになった。
そのようにアニメーション業界に革新をもたらした「ナイン・オールド・メン」だったが、1980年にウォルフガング・ライザーマンが引退したことで、全員がディズニーから去った。だが、その遺伝子は今も引き継がれている。「ナイン・オールド・メン」の一人であるエリック・ラーソンはディズニー在籍中にアニメーターのトレーニングプログラムを立ち上げており、そこで多くの若手アニメーターが「ナイン・オールド・メン」の薫陶を受けたのだ。
その生徒たちには、ジョン・ラセター、ブラッド・バード、ティム・バートン、ヘンリー・セリックとそうそうたる面々が並ぶが、忘れてはいけないのが『アナと雪の女王』の共同監督であるクリス・バック。90年にわたるディズニー・アニメーションの歴史の中で、彼は前の世代からの伝統を確かに引き継ぎ、そして『アナと雪の女王』という最大のヒット作を生み出したのだ。(編集部・福田麗)