「長生きできない」と語る子供…アメリカ人監督が見た福島の現状とは
原発事故以降の福島の子供たちを追ったドキュメンタリー映画『A2-B-C』のトークショーが15日、渋谷の映画美学校で行われ、ブロードキャスターのピーター・バラカンと日本在住のアメリカ人監督、イアン・トーマス・アッシュが日本の現状について語り合った。
本作は、福島第一原発事故後、甲状腺に小さなしこりなどがある「A2判定」を受ける割合が急増しているという、福島の子供たちを取り巻く現実にカメラを向けたドキュメンタリー。「テレビにはほとんど出てこない話で、とても興味を持ちました」と切り出したピーターは、アッシュ監督に「この映画は日本で公開されないと思っていたでしょ」と質問を投げ掛ける。
するとアッシュ監督も「確かに国内での上映は難しいと思っていた」といい、「外国で何か賞をいただければ、逆輸入という形でできるようになるかなと思っていました。去年の6月にドイツで賞(ニッポン・コネクション映画祭のニッポン・ビジョン部門)をもらって、ようやく日本の映画祭で数回、上映されました」と明かした。
そんな本作には、学校の除染作業は終了しても周辺地域の除染作業が進んでいないと不安を抱く母親たちや、「自分は長生きできないだろう」と淡々と語る少年が登場する。アッシュ監督はそんな彼らとのエピソードを挙げながら「福島のお母さんや子供たちの声に耳を傾けてほしい」と訴えた。
その様子に「こういった作品がメディアで取り上げられるのは難しい」とため息まじりに語るピーター。「日本では、放射能や原発の話をしようとすると、一方的に話すのはだめ。ちゃんと反対側の意見も取り入れ、中立に報道しなさいと言われる。でも、日本のニュースを見ても政府の発表ばかりでしょ。それじゃバランスが良くないから、こういったお母さんたちの意見を出せば、バランスが取れるんじゃないかなと思います」と付け加えた。(取材・文:壬生智裕)
映画『A2-B-C』は5月10日よりポレポレ東中野ほか全国順次公開