英国で活躍する日本人俳優、石田淡朗が明かす新作『レイルウェイ 運命の旅路』とは?
ロンドンを拠点に活躍する石田淡朗が、新作『レイルウェイ 運命の旅路』について語った。
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本作は、第2次世界大戦で日本軍の捕虜となったエリック(コリン・ファース)が、タイとビルマをつなぐ泰面鉄道建設で強制労働や拷問を受けた体験から、過去のトラウマにとらわれ、戦後も妻パトリシア(ニコール・キッドマン)と穏やかな日々を送れずにいたある日、戦争当時現場に居た日本人通訳の永瀬(真田広之)の生存を知るというもの。映画『バーニング・マン(原題)/ Burning Man』のジョナサン・テプリツキーがメガホンを取り、石田は若き日の永瀬役を演じた。
石田のキャスティングは意外だった。「ロンドンのエージェントから連絡が入りプロデューサーに会った。脚本を読んだとき永瀬の役柄が複雑で気に入ったが、エージェントからは小さな日本人役の依頼と聞いていた。通常のオーディションはオフィスやスタジオで行うが、今作ではロンドンのメンバーズクラブで、 永瀬が日本語で大声で叫ぶ尋問シーンが行われた。その時ようやく永瀬役を依頼されていると気づき、その演技を通して役柄を得た」と明かした。
永瀬役決定から撮影開始までは10日しかなく、しかも1か月後にはタイでの撮影が予定されていた。真田との事前の話し合いについて「幸運にも、僕は映画『47RONIN』で真田さんと共演していて、あの映画の撮影後にロサンゼルスで彼と昼食をとった。そのとき、将来親子役で共演できたら良いねと話していたが、まさかその2か月後に二人で同じ役を演じるとは思わなかった」と語った。さらに彼は永瀬役は自分の解釈で演じたことも付け加えた。
日本で能楽師として活躍した石田は、舞台のような激しいやり取りをする尋問シーンを演じてみて「確かに難しい撮影だったが、セットの環境は友好的で、俳優同士よく会話し、毎日ディナーも共にとった。ただ、僕は渡英して演劇学校で学び、その後オーディションを繰り返すうちに、俳優としての原点を忘れかけていた。それがジェレミー・アーヴァイン(若きエリック役)と演じたあの尋問シーンでは純粋に繊細に演じられ、演劇学校に通っていた当時が思い起こされ、二人のキャラクターが単に会話することこそが、俳優の原点であることを再認識した」と振り返った。
映画は、現在のようにPTSDと診断されず、傷ついたエリックの心の闇が克明に描かれ、事実であることを含め、日本人が知るべき作品に感じられた。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)