ゲーム「零」実写映画はクランクアップ!ホラーの鬼才・安里麻里監督が今後を語る -ウディネ・ファーイースト映画祭
水川あさみ主演の映画『バイロケーション』が、イタリアで開催された第16回ウディネ・ファーイースト映画祭で上映された。日本製ホラーは、Jホラーと称されて海外では根強いファンを持つが、そこに出演俳優Kis-My-Ft2の千賀健永やジャニーズJr.の高田翔のファンも駆け付け、約1,200席がほぼ満席となる観客でにぎわった。
同作品は第17回日本ホラー小説大賞を受賞した、法条遥の同名小説が原作。画家志望の主人公・忍が、突如現れたもう一人の自分(バイロケーション)に日常を脅かされることになる心理サスペンスだ。人間の心の奥底に眠る闇を排出したような作品を、かれんな女性監督が手掛けたことも現地の観客には新鮮な驚きだったようで、多数の取材を受けていた。
安里麻里監督は「『あなたの映画はJホラーっぽくないですね』と言われて、どこまで日本のホラーに精通しているんだ!? と驚きました。与えられた題材の中で自分を出すことは大事ですが、気を付けなくても出てしまうものですね。自分の中にある黒い毒が(笑)。この毒を振りまいてやるぞ! という気持ちで挑んでいます」と笑う。
安里監督は、映画美学校(東京・渋谷)のフィクション・コース第1期生。以降、『リアル鬼ごっこ』シリーズなどホラー映画界で才能を発揮してきた。新作はホラーゲームが原作の『零(仮題)』(今秋公開)で、4月末に撮影を終了。その翌日に『バイロケーション』ブルーレイ&DVD用のオーディオコメンタリーの収録を行ってからウディネ入り。そして帰国後すぐに『零(仮題)』の編集作業に入るというハードスケジュールだった。
安里監督は「職業監督としてまずきちんとした娯楽映画を作りたい。もちろん、ずっとオリジナルの企画は持ち続けていますが、日本映画界ではまだまだ企画が通りづらい状況にあるのでもっと頑張らないと」と語る。その一方で、「ホラーだけではなく、そろそろ普通の人間ドラマに挑んでもいいのかなと思い始めています」と言う。海外にも観客がいることを実感した今回の経験がどう作品に生かされるのか? 安里監督の展開を見守りたい。(取材・文:中山治美)
映画『バイロケーション』のブルーレイ&DVDはポニーキャニオンより7月16日に発売