フェデリコ・フェリーニ『道』が最高画質版に!
映画史上不朽の名作『道』最高画質版の特別上映会が21日、千代田区のイタリア文化会館で行われ、その修復作業の裏側が明かされた。2014年は、イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニの最高傑作『道』のイタリア初公開から60周年、さらに監督没後20周年という節目の年。そんな年に、映像会社IMAGICAが総力を挙げて修復作業にあたり、最高画質版を完成させた。
この日は修復作業に関わったIMAGICA TVの山下泰司氏が登壇。山下氏によると、もともと日本にある同作のプリントは状態が良くないものだったそうで、オリジナルネガが借りられないかイタリア本国に問い合わせると、「(本作プロデューサー)ディノ・デ・ラウレンティスのおいっ子さんがイタリアでの権利を持っているんですが、いずれは彼ら自身が修復作業を手掛けたいと希望しているため、イタリア国外にはオリジナルネガは提供しない」と言われたという。
そこでイタリア国外の上映権を持つ映画会社の関係者に問い合わせたところ、インターネガ(映画館にかけるフィルムを大量に現像するために使われる、原盤から複製したネガ)が日本にあることを突き止める。「(現物を見て)とにかく古くて傷の多いネガだったが、これまで数多くの名作を修復してきたIMAGICAの技術があれば、そこそこのものができるはず」と山下氏は確信を持ったといい、そこから3か月ほどかけて、およそ15万コマの傷の除去などを実施。さらに世界的音響エンジニア、オノセイゲンによるリマスタリングによってノイズも除去され、セリフも聞き取りやすくしたという。
そして山下氏の「イタリアには僕らが使ったものよりもいいネガがあって、いつかはいいものができるかもしれない。でも今日のものも決して悪くないです」という言葉に続けて、最高画質版に生まれ変わった『道』をスクリーンで上映。ノイズのないすっきりとした画面・音声は、物語世界に没入しやすく、食い入るようにスクリーンを見つめる観客。そして映画の上映が終わると、大きな拍手が湧いていた。
映画『道』は、粗暴な道化師ザンパノ(アンソニー・クイン)と、彼に引き取られた少女ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)の旅を、ニーノ・ロータの哀愁漂う音楽でつづった第29回アカデミー賞外国語映画賞受賞作品。(取材・文:壬生智裕)
映画『道』最高画質版は5月23日21時よりイマジカBSにて放送(リピート放送あり)
映画『道』DVD&ブルーレイは発売中