ジェームズ・マカヴォイに聞く、究極の悪い男を演じた映画『フィルス』とは?
映画『つぐない』のジェームズ・マカヴォイが、新作『フィルス / Filth(米題)』についてジョン・S・ベアード監督と共に語った。
同作の主人公ブルース(ジェームズ・マカヴォイ)は、頭脳明晰(めいせき)だが、酒、ドラッグ、不正行為を平気で行うスコットランド警察の刑事。ある日、日本人留学生殺害事件が発生し、目撃者のいない同事件を解決して出世を図ろうとするが、自身の過去が妨げとなり、精神的に追いつめられていく。映画『トレインスポッティング』の原作者アーヴィン・ウェルシュの同名小説を映画化。
下劣な男ブルース役に、イメージの異なるジェームズをキャストした経緯は「この役にはジェームズは多少若いと思ったため、実は第一候補ではなかった。だが実際に彼に会ってみると、かなりスマートな俳優で、すでに僕がこの映画で行おうとしていることを理解していて、わずか5分間ほどの話し合いを通して、その日に主演をオファーしていた」とジョン監督が明かした。
感情の起伏の激しい困難な役を演じたジェームズは「僕自身は全くブルースとは異なると思う。彼は精神的に病んでいる以外に、複雑な怒りを持ち、さらに自分自身を嫌悪している。もちろん、自分に嫌悪感を持つことは誰しもあることだが、ブルースはこの仕事に自分が向いているのかと疑い始め、そんな疑念が自分を徐々に支配し、最終的に自分に価値が見いだせなくなっていく。当然、ブルースは自分を尊敬できず、自分を(酒やドラッグなどで)悪用する」と答えた。映画内で極悪刑事を演じる彼の演技は秀逸だ。
アーヴィン・ウェルシュ作品の映画化過程では、必ず映画『トレインスポッティング』は比較対象になる。「あえて『トレインスポッティング』は参考にしなかった。アーヴィンも『僕の小説が映画化されると、いつも映画『トレインスポッティング』の真似になるから、その考えは取り払え』と言ってきた。もちろん、同じスコットランドでユーモアなどの類似点はあるが、今作の映像はキューブリック作品をイメージし、ドクター・ロッシ役のジム・ブロードベントのしゃべり方も、キューブリックの『時計じかけのオレンジ』の影響なんだ」とジョン監督は明かした。
映画は、本来なら好きにならないアンチヒーローが主人公だが、いつの間にか彼の世界観に観客はどっぷりハマってしまうのが魅力な作品でもある。本作のDVDは5月28日発売。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)