フラメンコの源泉をたどるドキュメンタリーが公開

　2013年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映され、大きな話題を呼んだ映画『ジプシー・フラメンコ』が8月9日より劇場公開される。本作は、フラメンコを芸術にしたといわれる伝説のダンサー、カルメン・アマジャの生誕100周年を記念して製作されたドキュメンタリー。固い絆で結ばれたバルセロナのジプシー・コミュニティーの中で、フラメンコという遺産が世代から世代へどのように受け継がれていくのかを鮮やかに映し出した作品だ。

　カメラが追ったのは、カルメンの血を引く者として、母と共に伝説のステップを次世代へ継承しようとする少女カリメ・アマジャと、腎臓に問題があることを心配する両親をよそに、いつか舞台で踊る日を夢見る5歳の少年フアニート・マンサーノ。彼らがそれぞれの人生で経験することは、フラメンコという生き続ける伝統を発見する旅でもある。

　メガホンを取ったのは、これまでにも『B-Side』などの評価の高いドキュメンタリーを撮ってきたエヴァ・ヴィラ監督。本作を「バルセロナのフラメンコとルンバの世界で、自分が何者かという問いの答えを探すカリメとフアニートの魂の旅」と表現したヴィラ監督は、「この映画は、自分が何かの一部であり、現代社会で薄れつつあるルーツのすぐ近くで生きていることを知る喜びをうたい上げているのです」と語っている。

　生きること全てを体で表現する、フラメンコ。全身全霊をささげて踊るカリメとフアニートの姿は、観る者をフラメンコの世界に引き込むことだろう。（宮本裕人）

映画『ジプシー・フラメンコ』は8月9日より渋谷・ユーロスペースほか全国順次公開