最重要指名手配のギャングのボス、ジェームズ・J・バルジャーを描いたドキュメンタリーとは?
映画『メタリカ:真実の瞬間』のジョー・バーリンジャー監督が、新作『ホワイティ:ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ v. ジェームズ・J・バルジャー(原題) / Whitey: United States of America v. James J. Bulger』について語った。
本作は、1970年代からボストンの裏社会を支配し、数々の犯罪に関わったウィンター・ヒル・ギャングのボス、ジェームズ・J・バルジャーがFBIの組織犯罪対策班と手を組み、街であらゆる犯罪に手を染めていた事実を、その被害者の遺族などのインタビューを通して描いたドキュメンタリー。
製作経緯は「長年ジェームズには興味を持っていたが、まさか映画を製作するとは思わなかった。だが近年、ジェームズの話は神話化され、彼を題材にした多くの書物が出版されている。ジョニー・デップ主演で映画化もされる予定だし、映画『ディパーテッド』ではジャック・ニコルソンのキャラクターも彼をベースにしているほど注目されていて、これほど過去の犯罪組織のボスが現代の文化にまで影響を及ぼすのを見たことがなかった」と理由を語った。
ジェームズの弟、ウィリアム・バルジャーはマサチューセッツ州上院議会の議長を務めていた。「彼の話も映画化できるほどの内容だが、今作ではほとんど描いていない。兄が犯罪組織のトップで、弟は政界のトップにいるなんて、まさにシェイクスピアの舞台劇のようだが、彼らがお互いを助け合ったかはわからない。人々が兄ジェームズに恐怖を感じて弟のウィリアムの選挙などで批判(攻撃)することを恐れていたことや、一方でウィリアムが上院議会の議長を務めていたため、警官や捜査官がジェームズを捕まえることをちゅうちょしたことなどの証拠もない。ただ、そんな環境を想像しただけでも怖いね」と明かした。
ジェームズの裁判を撮影中に、ジェームズから恐喝を受けた重要参考人スティーブン・レイクの毒殺事件が起きている。「スティーブンがコーヒーにシアン化物を入れられ毒殺された時に、裁判の関係者の間では、FBIがこれ以上の失態を防ぐために殺したのか、それともジェームズの一味が殺したのか話題になったが、ボストンの人々は、そのような両方の可能性があると信じられる恐怖の中で生きていることを、この映画は証明している」と真剣な目で答えた。
映画は、ギャングの世界の実態を余すところなく描いただけでなく、われわれが信じる政府の組織さえも疑わざるを得ない感情にさせられ、恐怖映画に思えた。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)