『フープ・ドリームス』の監督が描いた映画批評家ロジャー・エバートさんとは?
米国を代表する映画批評家ロジャー・エバートさんを描いた新作『ライフ・イットセルフ(原題) / Life Itself』について、スティーヴ・ジェームズ監督とロジャーさんの妻チャズ・エバートが語った。
本作は、シカゴ・サンタイムズ紙の映画批評家ロジャー・エバートさんの映画に対する情熱を、共にテレビ番組で司会を務めたジーン・シスケルさんとの掛け合い、彼を慕う監督、俳優や、家族とのインタビューを通して描いたもの。映画『フープ・ドリームス』のスティーヴ・ジェームズがメガホンを取った。
ロジャーさんは、20年前に『フープ・ドリームス』を「今まで観た映画の中でベストの1本だ」と批評し、スティーヴのキャリアをスタートさせた。そんなスティーヴが今作に関わった経緯は「実は偶然だ。映画『ドラゴン・タトゥーの女』の脚本家スティーヴン・ザイリアンとプロデューサーのギャレット・バッシュがロジャーの映画を企画し、彼らはドキュメンタリーの世界が大好きだったから、僕に監督をオファーしてくれた。僕ら以外にも、幾つかのオファーをチャズは受けていたが、彼女は僕らを選んでくれた」と、その運命に感謝した。
ロジャーさんの批評についてチャズは「彼は尊敬する監督でも、失望した作品には傷つけるほどの批評をしていた。けれど、その批評は知性あるもので、批判された監督も次回作を製作する際に勇気づけられるものだったわ」と答えた。一方、スティーヴは「ロジャーは映画『ブルー・ベルベット』を他の批評家が傑作と評価するのに対し、道徳的な観点から批判していた。僕はこの批評について彼に尋ねたら、批判した理由を長文で送り返してきた。彼には批判した作品でさえ、強い思いがあるんだ」と明かした。
長年のパートナーだったジーン・シスケルさんの、妻マレーネの参加について「これまで彼女はジーンに関してのインタビューを断ってきたが、今作については『自分が参加しなければいけない』と言ってくれた。ロジャーとジーンの番組を描く上で、彼女が正直に答えてくれて良かった。なぜなら彼女は、最初ロジャーに対して批判的(ジーンとロジャーは番組内で頻繁にけんかしていたため)だったが、僕らの映画に参加してくれたことで、ロジャーに対する意見が変わったからだ」と製作が深い意味合いをもたらしたようだ。
今作は、映画に人生をささげたロジャーさんを描いた、映画ファン必見のドキュメンタリー。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)