元日本赤軍リーダーの娘・重信メイ、メディアに「疑いの目を持って」
5日、かつて日本赤軍とドイツ赤軍を率いた二人の女性、重信房子とウルリケ・マインホフの壮絶な生きざまを、それぞれの娘・重信メイとベティーナ・ロールの視点から描いたドキュメンタリー映画『革命の子どもたち』の初日舞台あいさつが都内・テアトル新宿で行われた。この日は、房子の娘でジャーナリストの重信メイと、元日本赤軍メンバーで映画監督の足立正生が登壇し、それぞれの視点から激動の時代を振り返った。
立ち見が出るほどの満員となった客席を見た重信は、「こんなに大勢の方に来ていただいて正直びっくりしています」と感無量の様子。「わたしは今、メディア関係の仕事をしていますが、一方的な報道や意見をそのまま受け取るだけでなく、『どこか違うんじゃないか』という疑いの目を持って見てほしいと思います。メディアによって表現も違えば、きちんと伝えてないこともある。この映画が、皆さんの視野を広げるきっかけになってくれれば」と強調した。
また、本作の中でも描かれているが、常に死と隣合わせの生活を送ってきたことについて重信は、「正直、生まれた時から危険な状態で育っていて、大人になってから突然こうなったわけではないので、ストレスはなかった。ただ、周りとは違うなと子供ながらに感じていて、大人とお別れするときは、常に『もう二度と会えないかも』という感覚でしたね」と述懐。
これに対して足立監督は、「僕も映画の中でいろいろ語っていますが、それ以上につらい思いをさせてしまったメイちゃんが、こんなに大人になったんだな」と目を細めると、「当時はみんなで力を出し合って、メイちゃんを育てていこうという思いがあった」と振り返る。
さらに足立は、「一つ暴露しちゃうとね、映画仲間だった若松(孝二)監督も毎年のように僕らのところに来ていたんですが、メイちゃんが生まれて『国籍をどうしようか』という話になった時、『俺の娘にしたい!』と言い出して。『アラブ人の恋人に産ませた子供にすれば通用するかも』なんて言っていたね。結局、実現しなかったけど」。重信も、お父さんのように慕っていたという若松監督。本作の日本公開は、その若松監督の情熱なくして実現しなかったことをここに特筆しておきたい。(取材:坂田正樹)
映画『革命の子どもたち』はテアトル新宿ほかで上映中 全国順次上映予定