二人のシニア男性の旅行を描いたサンダンス映画祭の話題作とは?
今年のサンダンス映画祭で話題となったシニアの男性二人旅を描いた新作『ランド・ホー!(原題) / Land Ho!』について、共同監督アーロン・カッツとマーサ・スティーブンス、主演アール・リン・ネルソンとポール・エンホーンが語った。
本作は、義理の兄弟ミッチ(アール・リン・ネルソン)とコリン(ポール・エンホーン)は長い間疎遠だったが、妻に先立たれて、その後の女性関係もうまくいかないコリンを、ある日ミッチが自宅に招待し、アイスランド旅行に誘い出して、お互いの関係を修復するというドラマ。
企画は、マーサ監督のアイスランド旅行から始まったそうだ。「ミッチ役を演じたアールは実際には眼形成外科医で、わたしのいとこなの。彼はこれまでわたしの長編2作品に参加していて、いつか彼を主演させようと思っていた。そんな時に、ちょうどわたしがアイスランド旅行を計画し、ジョークをよく言うアールを一緒に連れていったらどんなに楽しいかと思って、その話をアーロン(共同監督)に話したら、この実験的な作品が生まれたの」とマーサが語る通り、アールはコメディー映画のコメディアンよりも頻繁に観客を笑わせてくれる。
医者のアールと異なり、ポールは長年俳優業に専念していたため、セット内での二人の様子は異なったようだ。「僕は俳優として次のシーンを演じる前に静かな休憩時間が欲しい。もちろん、常にしゃべっているアールの前ではそれは無理だけれどね(笑)」とポールが答えると、すぐにアールも「よく言うよ! ポールは気に入らないと、何度かセットから出て行ったよ!(笑) ただ、ポールはカセットに自分の声を録音して台詞を読み返すし、撮影シーンで僕の即興で話がそれそうになるたびに、軌道修正するような台詞を入れてくれていた」と評価した。映画内では、彼らの自然なやり取りが本作の魅力となっている。
2人のシニアを主人公に描いたことについてマーサは「わたしと同年代のフィルムメイカーの友人たちのほとんどは、実体験を反映しながら描いている。わたしにとってそれは何も訴えかけてこないし、自分の人生よりも他の人の人生の方が魅力的に思えるわ。シニアのアールは変化に富んだ人生を生きていて、他者に与えるべきものを多く持っているのよ」と理由を明かした。
映画は、撮影手法はあくまでドキュメンタリータッチだが、洗練された脚本と、自然体で演じる俳優が圧巻の秀作だ。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)