渡辺謙、ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』で提起する“生”のメッセージ
ゴジラ映画10年ぶりの新作としてハリウッドで再映画化された『GODZILLA ゴジラ』で、第1作『ゴジラ』(1954)にオマージュをささげた科学者・芹沢博士役を務めた渡辺謙が、出演の経緯や作品に込められた思いを語った。
『インセプション』(2010、クリストファー・ノーラン監督)以降に震災が起こり、2年半の間はほとんどアメリカでは仕事をしていなかったという渡辺。「その間は、日本のお客さまに何を届けられるかということを主に考えていました。そして、そろそろ3年過ぎるころを迎えて、ワールドワイドで何かをお見せできる機会が来たかなと思っていたときにこのお話をいただいたんです」
そのとき、渡辺は「なぜ、今、ゴジラか」と自問自答したが、答えは見つからなかったという。背中を押したのはノーラン監督の再来ともいわれる新鋭ギャレス・エドワーズ監督への信頼だった。「広島と長崎、そして福島があったという日本の状況を非常に深く理解していたし、ゴジラの成り立ちも含めてちゃんとわかってくれている。だから身を委ねても大丈夫だと思いました」
震災や原発事故を経験した日本人にはつらい描写が含まれていることについて「ハードルは高いと思います」という渡辺だが、『GODZILLA ゴジラ』には“生”のメッセージを託しているという。
「60年前に日本の映画人たちが、水爆実験や原子力爆弾を取り上げ、人類がどういう恐怖を持ち続けなければいけないのかということを提起する意味で『ゴジラ』を作りました。そして60年たった今でも同じ恐怖をわれわれは感じ続けているんです。その恐怖が今そこにあるのに、なかったことのようになってしまうことの恐ろしさを今、僕は感じます。もちろんエンターテインメント作品なので、単純にワーッと楽しんでもらえればいいんです。でも、何か一つチクッと刺さるトゲみたいなものをこの作品で提起できたら、痛みを忘れずにまた次の日につながる何かがあるような気がします」
地球滅亡の危機にひんした家族の絆の物語と、シリーズ史上最大のゴジラの恐怖、さらに新たな脅威をもダイナミックに描いた本作。渡辺からのメッセージは、恐怖をなかったことにするのではなく、痛みを忘れずに生きる勇気。単なる怪獣映画ではない新しいゴジラ映画の誕生を見逃す手はない。(編集部・小松芙未)
映画『GODZILLA ゴジラ』は7月25日より2D / 3D(字幕スーパー版 / 日本語吹き替え版)公開