中井貴一と阿部寛、一言も言葉交わさず…
俳優の中井貴一が30日、都内にて行われた主演映画『柘榴坂の仇討』完成報告会見に共演の阿部寛、若松節朗監督と登壇した。公開前で「あまりしゃべるなと言われている」と言いつつも、3回目の共演で息ぴったりの阿部との撮影エピソードを楽しげに語った。
これまで殺人事件の被害者と刑事(『麒麟の翼 ~劇場版・新参者~』)、検事と弁護士(『ステキな金縛り』)と、相対する役で共演してきた中井と阿部だが、とことん目を見て芝居をするのは本作が初。ところが、刃を交わす役どころのため、2か月間の撮影中は全く会話をしなかったそうで、一度も食事にも行かなかったと振り返る。
阿部は「貴一さんの役に対する真摯(しんし)な姿勢を感じ、あまり貴一さんの前に姿を見せない方がいい」と思ったそうだが、「初日からメイクが隣で意表を突かれた」と苦笑する場面も。
そんな二人に印象的なシーンを聞くと、中井は阿部が3メートルもの槍(やり)を扱うシーンを挙げ、「普通の人ならグラグラして持つのもやっと。走ったり、立ち回りなんて到底できないが、阿部さんが持つと普通の槍にしか見えない」と回想して大笑い。
阿部は、人力車を引くのに苦労したそうで、30メートルもの柘榴坂ではあまりにも重いため、スタッフが後ろから押すという案もあったそうだが、役者魂で引ききったという。そんな必死の阿部をよそに、中井は「押してもらった方がいいのになぁ」「これ、手を離されたらどうなるんだろう……。このまま俺は後ろ向きに落ちていくのかな」と不安でいっぱいだったことを明かし、会場を沸かせた。
この日、壮大な日本庭園で行われたフォトセッションでは、柘榴風味のかき氷がふるまわれ、中井と阿部は「柘榴の味を知らないけど、酸っぱくておいしい」と笑顔でほおばっていた。
人気作家・浅田次郎の短編集「五郎治殿御始末」所収の一編を映画化した本作は、江戸から明治へと時代が激変する中、武士として、人としての誇りと覚悟を持って生きる二人の男の交差する運命を描いた本格時代劇。政府によりあだ討ちが禁じられてもなお、密命を受けて敵を探し続ける彦根藩士・志村金吾を中井が、その敵である水戸藩士の佐橋十兵衛を阿部が演じるほか、広末涼子、中村吉右衛門、高嶋政宏ら豪華キャストが顔をそろえている。(取材・文:鶴見菜美子)
映画『柘榴坂の仇討』は9月20日より全国公開