登場人物が全部子供の『ダウンタウン物語』の子役、英国大ヒットミュージカル映画版の監督に
登場人物が全て子供という異色のギャングミュージカル『ダウンタウン物語』(1976)で映画デビューを果たした子役出身のデクスター・フレッチャー監督が、英国の大ヒットミュージカルを映画化した新作『サンシャイン/歌声が響く街』に『ダウンタウン物語』が与えた影響について語った。
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『サンシャイン/歌声が響く街』はスコットランド・エディンバラの田舎町リースを舞台に、さまざまな危機に直面しながらも前向きに生きる家族の姿を、双子デュオ・プロクレイマーズの名曲と共に描いたミュージカル。「僕のミュージカルの素地を作ったのは『ダウンタウン物語』だと思う」と言ってはばからないフレッチャー監督は、メガホンを取るにあたって本作を『ダウンタウン物語』タイプのミュージカルにしたかったと明かす。
「歌がドラマの中から現れるというか、音楽が始まってもストーリーは進み続ける。だから『ダウンタウン物語』で登場人物が歌い出しても奇妙には感じない。まあ、子供なのにギャングなのは変だけど(笑)。でもこれこそが『ダウンタウン物語』が本作に与えた影響だ。『シカゴ』のような大掛かりなナンバーがあって……という作品とは違って、ロケーションもどんどん変わるし、ミュージカルでも現実世界で起こっているように感じられると思う」。
そして『ダウンタウン物語』のアラン・パーカー監督とは40年近くたった今でも交流があり、『ワイルド・ビル』(2011)に続く監督第2作目となる本作のロンドンプレミアにも招待して感謝を伝えたという。そんなフレッチャー監督が考える“監督”という仕事とは、「自分が楽しんで、そしてみんなにもそれぞれがしていることを楽しいと思ってもらうこと」だという。本作が底抜けにハッピーな作品に仕上がったのは、フレッチャー監督のそうした考え方が根底にあったからなのだろう。
子役としてデビューしてから『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』などの俳優時代、そして監督業に就くに至るまで、40年近く映画業界に身を置いてきたフレッチャー監督は、「もちろんタフな仕事ではある。でも映画の現場には、たまたまとか、他にやることがないからといって仕事をしている人は一人もいない。みんなが何らかの努力をしてやっと現場に来ている。役者だけじゃなくてカメラマンや美術部門も同じ。それぞれの仕事に情熱を持っているんだ。そういうエネルギーがあるのが映画の現場だと思うし、それは過小評価されるべきものではないと思う。愛する映画で素晴らしいものを作りたいという人々の欲望はすごく大きいんだ」と今なお惹(ひ)きつけられてやまない映画の現場の魅力について熱く語っていた。(編集部・市川遥)
映画『サンシャイン/歌声が響く街』は8月1日よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開