キリスト教徒の母はイスラム教徒の娘の結婚に断固反対!カンヌ映画祭で注目を浴びた女流監督、驚きの主演、脚本、監督3役
2009年にカンヌ国際映画祭の監督週間で国際批評家連盟賞を受賞した映画『アムリーカ(原題) / AMREEKA』で注目された女流監督シャリーン・デイビスが、待望の新作『メイ・イン・ザ・サマー(原題) / May in the Summer』について語った。
本作は、アラブ系アメリカ人のメイ(シャリーン・デイビス)は、ヨルダンで結婚するためにアンマン空港で2人の妹ダリアとヤスミン(アリア・ショウカット、ナディーン・マルーフ)と再会し、母親ナディーン(ヒアム・アッバス)の自宅に滞在するが、厳格なキリスト教徒の母親はイスラム教徒のメイの婚約者を拒否し、さらに浮気で離婚した父親エドワード(ビル・プルマン)も女性問題を抱え、そんな彼らに振り回されながらも自分自身を見つけていくというドラマ。シャリーンは主演/脚本/監督を務めた。
主演/脚本/監督に果敢に挑戦したのは「もちろん自分のために脚本を執筆したわけではなく、初めは主演する気もなかった。だから、主役のためにさまざまな場所でキャスティングを1年間も行ったの。ただ、メイのようにヨルダンの文化を理解し、アラビア語を話せ、さらにメイの精神まで体現できるような女優には出会えなかった。それでもわたしは2作目のジンクスを考え、ずっと主演することを拒否していたけど、もしかすると主役を演じることが運命なのかもしれないと徐々に思い始めたの」と語る通り、彼女の思いが詰まった作品になっている。
名女優ヒアム・アッバスとの再タッグについて「『アムリーカ』でタッグを組んで以来ずっと友人関係にあって、実はこの母親役も彼女を念頭に執筆していたの。彼女なら感情の起伏をうまく表現できると思っていた。彼女は女優としてクリエイティブで、さまざまな質問をわたしにしながらコラボできたわ」と明かした。
ヨルダンを舞台にしたことについて「この30年くらい、毎年夏にヨルダンを訪れていて、その間にヨルダンが成長し変化していく姿を見てきたの。そしてさまざまな人たちと出会って今ヨルダンで何が起き、どんなものがトレンドなのかも学んだ。そんなヨルダンでの体験が、今作ではたくさん反映されている。脚本も実際にメイが訪れそうな場所を想像しながら執筆したの。キリスト教徒の母親役のために福音派の教会も訪れて信者とも話して、厳格な信者の観点を知ったわ」と語った。
映画は、異国の地で結婚式のために家族と再会する繊細な女性の観点が明確に描かれた作品。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)