柴咲コウから見た市川海老蔵は「宇宙人みたいな人」!?
鶴屋南北の歌舞伎狂言「東海道四谷怪談」がモチーフのホラー映画『喰女-クイメ-』に主演した市川海老蔵と柴咲コウ、そして、二人と組むのはそれぞれ2度目となる三池崇史監督が、作品の魅力や互いの信頼関係の深さを語った。本作は、「四谷怪談」を舞台で演じようとする俳優が、現実にも愛憎と狂気の中に取り込まれていくもので、劇中劇の「四谷怪談」と現実世界の俳優同士の愛をオーバーラップさせた、新たなジャパニーズホラーとなっている。
特殊メイクでお岩になりきった劇中の柴咲コウ!映画『喰女-クイメ-』フォトギャラリー
市川海老蔵は、劇中劇の伊右衛門とそれを演じる俳優・長谷川浩介にふんして“色悪”(外見は二枚目だが性根は悪人という歌舞伎の役柄)の魅力を全開させている。今回は企画にも名を連ねているが、「俳優とは違った方向から、映画がどうやって作られるのかを勉強したかった。『四谷怪談』は、今そのまま時代劇でやっても伊右衛門が悪い男だとは伝わりにくいと思う。浩介という現代人を通すことで、江戸時代の女性が伊右衛門に対して持っていた感情が、よりわかりやすく描けたと思います」と語る。
また、他の女性に心変わりした浩介を、孤独を抱えながら思い続ける女優・美雪を演じた柴咲コウは、劇中劇では4時間以上に及ぶ特殊メイクで伊右衛門に恨みを抱くお岩になりきり、「江戸時代と今では社会も女性の立ち位置も違っていますけれど、女性が一人で生きる上での孤独感には変わりがないと思います。その辺もお岩と美雪がリンクしたし、男女間にはやめようと思ってもやめられないいろんなことがあると思うんです。そういうものが実感として入ってくる、女性に共感してもらえる映画になったと思いますね」と言う。
三池監督は、海老蔵とは『一命』、柴咲とは『着信アリ』で組んでいるが、海老蔵と柴咲は初共演。そんな二人は、柴咲が「今まで会ったことがない、宇宙人みたいな人」と海老蔵のことを言えば、海老蔵は「僕にはない温度を持っている」と柴咲のことを表現。互いに異なるものを感じて新鮮な刺激を受けたようだが、共通しているのはどちらも三池監督に絶対の信頼を寄せていること。「二人は超人であり、最強の武器」と語る三池監督は、“最強”の彼らを使って“最恐”な戦慄(せんりつ)の世界を生み出してみせている。(取材・文:金澤誠)
映画『喰女-クイメ-』は、8月23日より全国公開