面白いのに上映予定ナシ!映画祭の観客から「もったいない」の声!
第63回ベルリン国際映画祭に正式招待されるなど高い評価を受けた『チチを撮りに』の中野量太監督最新作『お兄チャンは戦場に行った!?』『沈まない三つの家』が31日、大分県由布市で開催された第39回湯布院映画祭で上映され、中野監督のほか、小宮一葉、中村朝佳、泉光典、成澤優子、川田希ら出演者たちがシンポジウムに来場した。
中野監督の最新作となる両作は、「正直、めちゃくちゃ売れている役者はいません。でも可能性がある俳優さんを選抜して作りました」と解説する通り、監督がワークショップで選出した若い俳優とコラボレーションした自主映画となる。
29分の短編『お兄チャンは戦場に行った!?』は、4年間引きこもりだった兄が、カメラマンになる夢を見つけ、都会で女優を目指している妹に会いに行く物語。そして69分の長編『沈まない三つの家』は、川に落ちたわが子を釣り上げようとする女とその夫、離婚する両親のどちらかを選択させられる姉妹、病気で死に行く叔父を見舞い続ける少女という、3つの家族を描いた物語となっている。もともとは『沈まない四つの家』というタイトルで、一本の作品として制作されていたといい、監督は「編集していても、『お兄チャン~』のくだりだけなじまなくて悩んでいた。試しに分けてみたら笑えたので、別々の作品にすることにしました」と振り返る。
辛口でも知られる湯布院映画祭の観客だが、本作はおおむね高評価。中野監督の作品で、昨年、同地で好評を博した『チチを撮りに』『琥珀色のキラキラ』などにも通ずる、伏線を効かせた巧みな脚本、家族をモチーフとした物語、役者の自然な演技、さらに陰毛、太ももといったモチーフを挟み込んだほのかににおい立つ中野監督流エロスといったポイントを挙げて、「昨年よりもグレードアップした」「ハンカチがグショグショになった」といったコメントが続々と寄せられた。しかしこれまで本作が上映されたのは昨年から数えても数回程度だといい、「今後の上映予定はありません」と報告する中野監督。会場からは「面白いのにもったいない」「なんとか商業ベースに乗せてほしい」「ワンコイン上映をやってみたらどうか」などさまざまな意見が寄せられていた。(取材・文:壬生智裕)