上映会中止の震災記録映画、上映受付を再開…再編集で継続支援訴え
やらせともいえる過剰な演出があったと一部で報じられた震災記録映画『ガレキとラジオ』のエグゼクティブプロデューサー・山国秀幸が29日、今年の3月6日以降中止していた同作の上映会受付を再開すると発表した。一部の場面を差し替えるほか、出演者の現在の姿を捉えた映像を追加。タイトルも『ガレキとラジオ 2014』に変更する。
同作は東日本大震災後、宮城県南三陸町に生まれた素人ラジオ局「FMみなさん」の活動を追ったドキュメンタリー。作中で電波の届かない地域にいた女性がラジオを聞いて励まされる場面があり、スタッフによる演出であったことが一部報道で明らかになっていた。
山国は報道後、出演した女性と直接面会したといい、「報道内容が真意とは違うこと、映画を大事に思ってくださり、再上映を何より望んでいることなどが分かりました」とコメント。この問題については、映画の出演者も報道内容に声明で反論しており、記事内で「映画の出演に罪悪感を抱き苦悩している」と紹介された出演女性の真意について、「本心は、記事とはかけ離れたものです」と明かしている。
一方で、その女性とラジオが関わっている場面は差し替えられる。これについて女性本人は「やらせではないので、このまま上映してください」と言っており、山国も「再編集を行うことで、あの記事の全てを肯定することになるのではないか? という悔しさもあります」としているが、これから映画を観る観客が先入観なく同作を鑑賞できるようにするために決断。映画の本筋に影響はないとしている。
さらに、2014年3月時点の出演者のインタビューなどをエンドロール後に追加。震災から3年以上がたった現在も、「出演者の中には、失業している方、不安に思われている方、 失った家族のことを想っている方」がいるといい、山国は「彼らの直近の状況を伝えることで、継続した被災地支援が必要だということを私たち自身が認識し、これから映画をご覧になられる方々にも改めてお伝えしていきたいと考えました」としている。インタビューは毎年更新し、要望がある限り「2015」「2016」とタイトルを改め上映会を開催するという。
また過去に上映会を開催、中止した主催者や劇場については初回に限り上映料を無償にするとのこと。山国は「ご迷惑やご心配をおかけしてしまったにも関わらず、出演者の皆様、 南三陸町の皆様、上映会主催者様や劇場の皆様、全国の『観る会』の皆様、他たくさんの方々が再上映に向けて応援してくださいました。皆様の温かいお言葉は忘れません。改めて深くお礼申し上げます。本当にありがとうございました」としている。(編集部・入倉功一)