吉永小百合を中心に結び付いた『ふしぎな岬の物語』の共演者たち
映画『ふしぎな岬の物語』で主人公を演じた吉永小百合と、共演の阿部寛、竹内結子、笑福亭鶴瓶が、第38回モントリオール世界映画祭で審査員特別賞グランプリとエキュメニカル審査員賞をダブル受賞したことでも話題の同作について、その魅力を語った。
この作品は千葉県鋸南町の岬に実在するカフェをモチーフに、森沢明夫が書いた小説「虹の岬の喫茶店」を、成島出監督が映画化したもの。今回吉永小百合は初めて企画にも名を連ね、キャスティングから編集、音入れなど映画製作全般に関わっている。吉永は「寂しい人やつらい人がその場所へ行って癒やされる、パワースポットみたいな岬のカフェが実際にあって。そこを舞台にみんなで寄り添って明日に向かう作品を作りたいと思ったんです」と企画意図を語った。彼女は岬のカフェで30年間コーヒーを淹(い)れ続ける女主人・悦子を演じている。
その悦子とひそかに思い合っているタニさんを演じるのは、これが吉永とは3度目の共演となる笑福亭鶴瓶。「今度共演するときは夫婦役でと言っていたんですが、夫婦じゃないけれど、お互い愛情を感じている役ですからね。ほんまに、こんな話が来たのは不思議だと思いますわ。吉永さんから出演依頼のお手紙をもらって、それで断る芸人はおらへんからね」と本人はうれしそう。
阿部寛と竹内結子は、これが吉永と初共演。子供の頃に悦子に引き取られ、彼女に育てられたおいの浩司を演じた阿部は、「吉永さんから悦子が浩司を引き取った頃と同じ年齢の写真があったら、いただけませんかと言われたんです。僕がお渡ししたら、代わりにその当時の吉永さんの写真をいただきました。それがとてもおきれいで、浩司も初めて悦子を見たとき、思春期間近だったでしょうから、女性的なことも意識しただろうなとか。より具体的に浩司と悦子の関係をイメージすることができました」と言う。
竹内は「吉永さんはすごくテキパキしていて、とても頼もしい方だなと思いました。(吉永さんが男性だったら)こんな彼氏がいたらすてき! と思うような方です」と、すぐに先輩女優の人間性にほれ込んだ。この作品では悦子を中心に、カフェに集う人々の温かい触れ合いが描かれるが、共演者たちの間にも年齢やキャリアを超えた絆の結び付きが生まれたようである。(取材・文:金澤誠)
映画『ふしぎな岬の物語』は10月11より全国公開