中島哲也監督、『渇き。』英プレミアと役所広司受賞で確かな手応え!
現地時間15日、第58回ロンドン映画祭に参加している『渇き。』の中島哲也監督が、イギリスプレミアとなった前日の様子を振り返った。ロンドン、ハックニーで開催されたプレミアで、観客からビビッドな反応を受けたという中島監督は、「『いわゆるバッド・コップ物かと思ったら、人間の深層に連れていかれて、こんな映画を観たのは初めてだし、すごく良い旅をしたような気分だった』と言われたのが、うれしかったです」と感激の面持ちだった。
本作で破綻した元刑事を演じた役所広司は、イギリスプレミアに先立ち、第47回シッチェス・カタロニア国際映画祭(スペイン)で日本人初となる最優秀男優賞に輝いた。役所とはメールで喜びを分かち合ったという中島監督は、「賛否両論ある映画になることは、演じている役所さんも作っている僕もわかっていました。賞をくれるということは理解してくれたということでしょうから本当にうれしいです」と確かな手応えを感じているようだった。
脇を固めるオダギリジョー、妻夫木聡らのアクの強いキャラクターも見どころだ。イギリスでも公開された前作『告白』までは俳優に細かく指示するタイプだった中島監督だが、今回は「嫌な人間しか出てきませんが、その人間たちが生きていく“ものすごいエネルギー”を表現したいと思っていたので、『コントに見えてもいいから派手にやって』と言って放り出した」という。「結構みんなが自由に泳いで、他の映画ではあまり見せていない魅力を発揮してくれたのではと思います」と俳優陣の奮闘をたたえていた。
結果、ダークな話でありながら、突き抜けたポップな表現になっているあたり、クエンティン・タランティーノ作品を思わせることについて、中島監督は「人間の捉え方が近いのかもしれませんし、僕自身、タランティーノ映画は大好きです」とコメント。
前作に続いて人気小説の映画化となったが、原作にとらわれることはないようだ。「大事なことは最初に読んで面白いと思った感情を忘れないで、その感情が消えないように映画化することです。それを忘れてしまうと、原作の一字一句に逆にとらわれて、失敗すると思います。読み終えたときの自分の感情さえ覚えていれば、ストーリーや登場人物を変えても、面白さは消えない」。中島監督を通して抽出された日本の小説のスピリットが、海外でも受け入れられたといえそうだ。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)
映画『渇き。』ブルーレイ&DVDは11月19日(水)にTSUTAYA先行レンタル開始、12月19日(金)発売。価格はブルーレイ・5,800円、DVD・4,800円(どちらも税抜き)
第58回ロンドン映画祭は現地時間19日まで開催