倒錯的な女性同士の愛の世界を昆虫学と絡めつつ描く!注目の英国人監督の新作
現在開催中の第58回ロンドン映画祭で、イギリスの同世代を代表する監督の1人と目されているピーター・ストリックランドのトークイベントが開催された。ストリックランド監督作は、『ビョーク/バイオフィリア・ライブ』(ニック・フェントンとの共同監督作)と『ザ・デューク・オブ・バーガンディ(原題) / The Duke of Burgundy』の2本が同映画祭に出品されている。
歌手ビョークのライブにさまざまな自然界の映像が絡む『ビョーク/バイオフィリア・ライブ』は、ロンドンのアレクサンドラ・パレスでのライブを収録という触れ込みだ。司会者に「ツアー最後の地でのライブ映像ですよね?」と確認されると、ストリックランド監督は「いいところをついてきたね。実はごまかしちゃった。日本でのライブ映像も入っています」と告白。同席したフェントン監督も「2箇所、日本での映像です」と続けた。
『ビョーク/バイオフィリア・ライブ』のテーマが「音楽と自然」なら、『ザ・デューク・オブ・バーガンディ(原題)』のテーマはさしずめ「愛と虫」。冒頭、歴史を感じさせる屋敷の中、高圧的なマダムとこき使われている若い家政婦が登場するが、すぐにそれがロールプレイ、二人の愛のゲームとわかる。次第に、若い恋人の気持ちをつなぎとめるため、必死で女主人を演じる女性の、おののく心が見えてくる。その彩りとなるのが「虫」。二人が通うのが、有閑マダムや良家のお嬢さまを思わせる女性ばかりが熱心に学ぶ昆虫学のクラスなのだ。ユーモラスでエロチック、そして真摯(しんし)な愛の物語となっている。
虫を登場させた理由について、ストリックランド監督は「理由はあるともないとも言えるけど、夏が過ぎると死んでしまう虫のはかなさに、愛のはかなさをかけたところはあるね」と説明していた。全くタイプの異なる2作品でそれぞれに特異な映像表現を見せた点が、ストリックランドをイギリスの注目監督にしているゆえんだろう。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)
第58回ロンドン映画祭は現地時間19日まで開催