劇画を通じた出会いに感謝…伝説的マンガ家・辰巳ヨシヒロの手紙に別所哲也も感無量
手塚治虫が嫉妬したともいわれる「劇画」ジャンルを確立したマンガ家・辰巳ヨシヒロの半生を描くアニメーション映画『TATSUMI マンガに革命を起こした男』の舞台あいさつが15日、角川シネマ新宿で行われ、声優を務めた別所哲也が登壇。公開を喜ぶ辰巳からの手紙が読み上げられると、別所は「今日は辰巳先生と一緒にここに立ちたかった。感無量です」と目をうるませた。
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本作で1人6役を務めた別所は、「辰巳先生をご存知ない方もあるかもしれません。僕も本作で初めてお会いしたんです。とても職人気質で、男は黙って仕事だ、という感じの方でした。先生の世界は、あの手塚先生に負けないくらい素晴らしいもので、人間がいつか向き合わなきゃいけないものを描いている」と辰巳について解説。また6役の声を担当したことで「キャラクターたちから、人の弱い部分、情けない部分、悲しい部分に触れて、人間が本当にいとおしくなりました」と出演を振り返った。
この日は、同席した山本真郷アソシエイト・プロデューサーが辰巳の手紙を代読。「体の自由が利かず、残念ながら参加できなくなりました。これまで劇画を通じて、たくさんの人との出会いや発見がありました。(エリック・)クー監督、別所さんと出会い、カンヌ国際映画祭の赤いじゅうたんの上を歩いたことも、全て劇画のおかげなのです」というメッセージが読み上げられ、別所は「日本的な独特の部分と、全ての人に通じる部分。その両方を世界の人たちが感じ取ってくれて、先生の世界的な人気になっているんですね」とその魅力を語っていた。
本作は、第13回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した辰巳の半自伝的作品「劇画漂流」をベースに、「劇画」というスタイルを作り出し、マンガを大人の読み物へ昇華させた辰巳の足跡にスポットを当てたアニメ。シンガポールの巨匠エリック・クーが監督を務め、第8回ドバイ国際映画祭最優秀作品賞(ムハ・アジアアフリカ長編部門)を受賞。第64回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」に正式出品されたほか、第84回アカデミー賞外国語映画賞のシンガポール代表に選出されるなど、世界的な注目を集めている。(取材/岸田智)
映画『TATSUMI マンガに革命を起こした男』は角川シネマ新宿ほかにて公開中