パトリス・ルコント監督、アラン・リックマンに抱き締められ「勲章よりうれしかった」
フランスの名匠パトリス・ルコント監督が3日、代官山蔦屋書店3周年記念イベントに出席し、新作『暮れ逢い』について語った。芥川賞作家の柴崎友香も出席した。
この日の朝、日本に着いたばかりだというルコント監督は、プロモーションでの来日は15回目だと切り出すと、「僕はあまり日本語ができなくて。『オハヨウゴザイマス』『モシモシ』くらいしか言えないんだ。まあ、日本に電話をする機会もなかなかないんだけどね」とちゃめっ気たっぷりにあいさつ。
本作の舞台は1912年。大病を患い、自宅療養を余儀なくされた初老の実業家ホフマイスター(アラン・リックマン)の個人秘書としてやってきた美しい青年(リチャード・マッデン)が、やがてホフマイスターの若き妻ロット(レベッカ・ホール)と惹(ひ)かれ合うさまを描き出す。
アランとは今回が初タッグとなるルコント監督は、「こんな話をすると、なんてうぬぼれやなんだと思われるかもしれないが」と前置きをしつつも、「アランは大きな予算の映画が続いていて、俳優はうんざり、と疲れていた。でも、この脚本を気に入ってくれて、わたしの『リディキュール』も気に入っているから出演すると言ってくれた。それからクランクアップとなり、打ち上げパーティーの席で、アランが歩み寄ってきて、『ありがとう。僕が忘れかけていた映画への愛情を思い出したよ』と言って、抱き締めてくれたんだ。あれはフランスの立派な勲章をもらうよりもうれしかったな」と述懐。
「実はもう1本、次の映画を撮り終えていて、今月末にフランスで公開が予定されている。喜劇なんだけど、勢いで撮った映画なんだ」と明かしたルコント監督。アニメ、コメディー、恋愛映画と、幅広いジャンルを手掛けるルコント監督は、「きっと双子の兄弟が10人くらいいるんだろうね。よく巨匠といわれる人は毎回、同じスタイルで撮るけど、僕は毎回違う作品を作っているから巨匠になれなくて残念」と笑いながらコメント。「いえ、あなたは巨匠です!」と観客から返されると、「今、僕が高い椅子に座っているからそう言ってくれるんじゃないの?」とユーモラスに応じ、会場を沸かせた。(取材・文:壬生智裕)
映画『暮れ逢い』は12月20日よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開