デヴィッド・フィンチャー監督と原作者が明かす『ゴーン・ガール』とは?
デヴィッド・フィンチャー監督が話題作『ゴーン・ガール』について、 原作者ギリアン・フリンと共に語った。
本作は、結婚5周年記念日に妻エイミー(ロザムンド・パイク)が行方不明となり、酒場を経営する夫ニック(ベン・アフレック)は警察の捜査にも協力するが、人気作家エイミーの失踪はメディア報道を加熱させ、不誠実なニックの性格が表面化して世間はニックを犯人に仕立て上げていくものの、予想できぬ真相が後に明かされるというもの。原作者ギリアン・フリンの同名小説を、映画『ソーシャル・ネットワーク』のデヴィッド・フィンチャーが映画化した。
原作だけでなく、脚色も携わったギリアンは「(わたしに脚色させるのは)トリッキーな提案だと思った。もちろん、映画化権を製作会社が得てからは、脚色はわたしがすると思っていたけど、実際に脚色を任されると、とても大きな作業に思えた。ストーリー構成は、映画特有の構成を、奴隷のように犠牲となって執筆するのではなく、原作が持つダークなトーン、夫婦の関係、全体の不思議な雰囲気を重んじながら脚色した」と明かした。
メディアの過熱報道がユーモアをもって描かれていることについてギリアンは「実はわたしは最初からデヴィッド監督を望んでいたの。彼は息の詰まりそうな空間で、恐れや不安を描いてきたことで知られている。でも、彼の作品群を通して描かれる奇妙で突発的なユーモアに関しては、周囲からまだ過小評価されていると思う。だから原作が持つ奇妙なユーモアを、デヴィッド監督ならば取り入れてくれると思ったの。特にメディアの過熱報道の箇所はそんなユーモアがあり、重要なシーンよ」と答えた。
デヴィッド監督は演出について「俳優をどう演出するかについて語ることは馬鹿げていると思う。それはまるで小説を書くように複雑でもあるし、映画製作はスタッフと俳優全員が関わってもいるからだ。さらに俳優がセットに登場する前から、僕らスタッフはプレッシャーを感じてもいる、それでも現場では脚本を書き換えることもあるし、俳優の即興的な演技が映画内に含まれることもある。あくまで、バレエ・カンパニーのように全ての息がぴったり合わなければいけない」と語った。
映画は、トーンの全く違う前半部分と後半部分の演出を通して、デヴィッド監督の才気を感じさせる作品に仕上がっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)